チェロ・アンサンブル#90

O先生のレッスンに4名が出席。オッフェンバックの2重奏曲(作品49)の第3番の2回目。前回集中的にさらった第1楽章に続いて第2楽章、第3楽章を丁寧にみていただいた。最後にメンバー同士が一対一で合わせたが、分散和音がたくさん出てくる第3楽章はなかなか難しかった。今月はメンバーの都合がつかず先生のレッスンは今日の1回のみ。12月は20日と27日にレッスンがある。クリスマスとか年の瀬とか、もうそんな時期になってしまう。
 

弦楽器フェアに行ってきた

1日から科学技術館で始まった弦楽器フェア、さっそく初日に行ってきた。仙台で弦楽器を作っている畏友の伊東三太郎と1年ぶりに再会。彼の新作ヴァイオリンとチェロは例年のようにとろけるような柔らかい音を出していた。50年後にはもっと締まった鳴り方になりそうだが、見届けるのは無理。地下にあるホールでのプロ奏者による演奏会でも彼の楽器が使われた。今年のヴァイオリニストは癖の強い弾き方をする人で、どの楽器を使っても「ベター」とした彼女好みの音になっていた。制作者ごとの楽器の音の違いは、それほど大きくは感じられなかった。

展示場内に置いてある新作楽器(ヴァイオリンとチェロ)をいくつか弾いたが、黒澤楽器のブースにあったフランチェスコ・ビソロッティのチェロ(2013年)は、実に軽やかに鳴る楽器で、持った感じも軽く、スルスルと音が出てくる優れものだった。店員さんのセールストークによると、最近作者が亡くなったので値段が高騰する見込み。今は1000万だが将来は3倍ぐらいになるから早く買った方がいいと。ふ~ん。レナート・スコラヴェッツァも亡くなったそうだ。イタリアの大家が次々に鬼籍に入ってゆく。

私が持っているドイツのレオンハルトのチェロの最近作も試してみた。私の楽器(1996年)よりも、見栄えも鳴りっぷりもよろしかった。スクロールなどは全く造形が違う。分業による制作方法を取っている工房だから、別人の作なのだろう。この時、試奏用に借りたシャルル・バザンの弓(200万)はチョコレートブラウンの竿が細身でしなやか、腰がしっかりしていて、芯の強さと適度なずしりとした重みがあるいい弓だった。知人が持っている同じ作者のヴァイオリン弓と同一キャラなのを確認した。

島村楽器のブースでシュテファン=ペーター・グライナーを発見!さっそく弾かせてもらった(お値段は1400万超。新作とは思えない水準)。うわさに聞くスパー新作の実力には畏れ入った。オールド仕上げのデルジェスモデルで、E線の音のまろやかさと密度感はとても新作とは思えなかった。近所のブースで弾いたファニオラ(900万円台)といい勝負。新作だから健康状態はいいし、音量もある。音色はマイルドで刺激的な要素は皆無。テツラフみたいなソリストがレコーディングにステージにと活用する理由がわかった。
 

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今回もシメオネが来ていたモラッシ・ファミリーのブースにはシメオネの子供の楽器が展示されていた。モラッシの孫である。私が持っている1983年のGBMの相場を聞いたら、「よい投資をなさいました。お大事に」だって。
 
この頃は消耗品を売るブースが減ってしまって残念なことだが、最近注目されている羊羹みたいな松脂Leatherwood Bespoke Rosinのメーカーが出展していた。業者向けの卸値が表示されていたので、日本の店頭価格は仕入れ値の5倍前後とわかった。
 

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18時20分から鑑定家のエリック・ブロットと、ヒルで働いていたフロリアンレオンハルトの講演会があった。ブロット氏の話はデンドロクロノロジーCTスキャン、UV撮影などの技術的な説明がメイン。講演会もそれなりによかったが、マツオ商会のブースにはブロットのコレクション(ポッジ、ファニオラ、カピキオーニ、ビジャッキ、アントニアッジ、ペドラツィーニなどのモダンイタリー)が展示されていた。大盤振る舞いのサービスではなかろうか。
 

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知人が撮影したブロットのコレクション
 
 
レオンハルト氏は20時間も飛行機に乗って羽田から科学技術館に直行してきたそうで、時差ボケのご様子。1900年ごろにロンドンで作られたデルジェスのコピー楽器に18世紀の作家のラベルが貼ってあった件の鑑定プロセスを写真を交えて説明していた。ニスの保存状態がいいわりに、表板のエッジの摩耗が多いのは不自然とか、板についた小傷の色が一様に黒いとか、パフリングに黒檀が使われているのは18世紀のクレモナ風ではないとか・・・素人の私が見てもデルジェス・モデルなのはわかったけれど、真贋の鑑定には2週間程度かかるそうだ。
 
最後に質疑応答があり会場内のお客さんから流暢な英語で、ヴァイオリンの鑑定作業にAIを導入する可能性の有無についての質問があった。
 
そもそもAIを導入する場合、コンピューターに誰がデータを入力するのだろう?ヴァイオリンの一流鑑定家は世界中で5~6人しかいないという。だから彼らが手掛ける高額楽器の鑑定書の発行料は、それなりの金額になる。飯の種である貴重なデータ(楽器の細部を覚え書風に描きためたスケッチなどもある)や経験を機械に預け、鑑定作業をAIに代替させるプランに喜んで協力する人がいるのだろうか?  講演会は20時20分に終了。
 

弦楽四重奏#9

今日は毎月1回開催の平日弦楽四重奏団の練習があった。ヴィオラの女性は欠席。3名でハイドン「五度」の第1楽章と第2楽章の復習をやった。第1楽章は8月に都内で披露して一段落のつもりだったから、あちこち忘れていた。

指導者さん(ファーストヴァイオリン担当)は、私のリズムカウントが甘くなる箇所を遅いテンポで何度も繰り返し練習させた。八分休符をはさんだ八分音符と付点四分音符がスラーでつながり、なおかつ後ろの音符にスタッカートが付いているフレーズを繰り返すところとか。

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スタッカートが付いた四分音符は短く切り上げる習慣がついているので、寸足らずになってしまっていたが、そこを踏ん張ってギリギリまで音を伸ばす特訓をやってもらった。一方、セカンドヴァイオリンさんは音程をだいぶ突っ込まれていた。

「五度」の譜面はシンプルだが、やるべきことが山盛りで奥が深い。ハイドン交響曲弦楽四重奏曲の基礎を作った作曲家として知られる。「五度」を弾いていると、モーツアルトベートーヴェンが尊敬しただけのことはある偉大な天才の仕事だと実感する。前者の才気走った前衛や、後者の緻密な構築性はないけれど、温厚にして円満、典雅な古典美を感じさせる作品が多い。練習時間の最後に第3楽章も通した。悪魔が徘徊するような暗い雰囲気のメヌエット。ハロウィンの日に似つかわしいおどろおどろしさ。ハイドンにもこんなけったいな曲があるのだ。

 

 

 

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チェロ・アンサンブル#89

10月2度目のO先生のレッスン、皆さんの都合に合わせて平日開催。5名全員出席。オッフェンバックの2重奏曲(作品49)の第3番をさらった。ちょっと暗い雰囲気の曲は3楽章構成、かなり長大である。今回は3楽章まで譜読みをしてから、いつものように一対一で合わせたが第1楽章をやって時間切れ。残りは次回に持ち越しとなった。

 

前回、メンバーの女性所有のチェロ(長期間の調整・修理の結果激変した楽器)を、再度弾かせてもらった。10月5日に試奏した時は、工房で新しい弦(下2本はスピロコア、上2本はラーセン)に張り替えた翌日、それから20日ほど経過して弦が馴染んでどう変化しているか?結果はだいぶ落ち着いて、以前から知っていた艶消しのダークな音が戻っていた。前回は、つややかで丸みのある粒立ちのいい音が前に出てくるから驚いたのだが、それは新しい弦を張った直後のみの現象だった。楽器の評価は難しい。音色は元に戻っていたが、あの楽器の悪癖だったA線が突出して鳴るバランスの悪さは完全に解消されていた。

 

 

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城下町の弦楽アンサンブル #4

毎月1回の練習をしている城下町でのアンサンブルの練習があった。午前9時の開始時間に揃ったのは私を含めて5名。あいにくの悪天候の響で遅参したメンバーが2名、楽器の運搬に難がある雨天の日はいつも欠席するコントラバスさんは今回も欠席た。

 

練習メニューは以下。

 

1)パッフェルベルのカノン(クラリネットが入る変則版)

2)あの素晴らしい愛をもう一度

3)もののけ姫

4)アメイジンググレイス

5)シュターミッツのクラリネットコンチェルト第3楽章

6)バッハのドッペルコンチェルト第3楽章

 

バッハ以外は比較的簡単。特にシュターミッツの曲は平易で弾きやすいが、同じようなフレーズを何度も繰り返すので退屈する。アマチュアでも楽しめる曲をたくさん書いたテレマンを思い出す。

 

最後に練習したバッハの2本のヴァイオリンのための協奏曲(第3楽章)は、それ以外の曲とは次元が違う。伴奏オケのパートは休符が多くて常時数えていないと落ちる危険性が高い。ソロとトゥッティが別々の動きをして絡み合うので、ジグゾーパズルを組み立てる作業のような印象もある。正確に決まれば美しいが、少しでもズレが生じると収拾がつかなくなる。実際に今日の練習でもアンサンブルが崩壊していた。

 

指導者さんが遅いテンポでオケだけ弾かせてからソロが加わったが、よそのパートを聞いていたら数えるのが遅れてしまうからソロを聞いて合わせる余裕はなかった。3楽章の頭の部分をさらっただけでも冷や汗ものだった。ここのアンサンブルの選曲はメンバーのリクエストで決まるらしいが、平易な曲とそうでない曲の落差が極端に大きい。それぞれのメンバーの好みが反映しているのだろう。

 

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北軽井沢の浅間牧場を散策

北軽井沢浅間牧場のハイキングコース散策に出かけた。同じ時期に同じ場所に行って同じ景色を見てくる秋の恒例行事。去年は10月下旬に出かけたら紅葉が終わりかけていた。今年は1週間早めたが台風19号の影響か、木々の葉っぱは紅葉する前に茶色く枯れていた。紅葉は残念だったが、ハイキングコースの途中にある天丸山(小高い丘)から眺める浅間山雄大な山容は相変らず見事だった。

 

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天丸山

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     天丸山山頂から西側に広がる浅間山と牧場の景色(午前9時3分撮影)

 

去年は午後に天丸山に到着したので浅間山が逆光気味で暗かった。今年は軽井沢に前泊して午前9時ちょうどに天丸山に登った。予報では曇りから雨になるあいにくの天候で、軽井沢の街中はどんより曇っていた。しかし北軽井沢は晴れていて浅間山が綺麗に見えたのはラッキーだった。とはいえ、晴天は長く続かず9時半ごろには雲が出て来て浅間山の上半分は雲に覆われてしまった。まさに「早起きは三文の徳」。

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                午前9時半頃撮影

 

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               天丸山の東側

 

牧場内で草をはむ牛を見ていたら、離れた場所にいた牛が私に気付いて1頭、2頭と近寄ってきた。じきにたくさんの牛が私の前に勢ぞろい。有刺鉄線に首がひっかかっているのも気にせず(?)、頭を伸ばして草を食べていた。

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これが牛乳の原料かと足元に生える青々とした牧草を見た。数は少ないが、散策路の草むらにはマツムシソウやリンドウの花が咲いていた。早朝の浅間牧場には観光客がいなくて貸し切り状態で自然を楽しんできた。歩きながら聞えてくるのは鳥のさえずりぐらい。それ以外は屋外にいるのにほぼ無音空間。静寂の贅沢さを堪能した。

 

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浅間牧場ハイキングコースを歩く時にはクマよけの鈴は必需品らしい

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ハイキングコースは向かって左側の細い道。右側は自動車道路(一般車両は走行不可)

 

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鬼押し出しのあたりの紅葉(半分枯れている?)

 

 

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チェロ・アンサンブル#88

10月最初のO先生のレッスンがあり、5名全員がそろった。前回からスタートしたオッフェンバックの2重奏曲(作品49)の第2番をさらった。アレグロとアレグレットの2楽章からなる曲で、2曲目は繰り返しが多くワンパターンの雰囲気もある。飽きずに弾き通すには工夫が必要とO先生がおっしゃっていた。いつものように生徒同士が一対一で合わせたが、2時間のレッスン時間が余ってしまったため、最後にO先生と一対一で合わせる練習をやった。

 

今日はメンバーの女性が持ってきたチェロの激変ぶりに一同が驚いてしまった。彼女の楽器はかつて私が所有していたもので、どういう音が出るのかは熟知している。ノーブランドの100年ほど前のドイツ製量産楽器である。いくらかくすんだところのある暗めの柔らかい音質が持ち味のチェロだった。今年の春、バスバーに沿って表板に細いクラックが入っているのを私が気付き、行きつけの工房で診察、即入院となった(所有者の女性はクラックが重症だとは思っていなかった)。修理期間は予想以上に長引き、5月から10月まで5か月もかかった。

 

数日前に仕上がって戻ってきたのを弾かせてもらったところ、同じ楽器とは思えないほどに変わっていた。修理前の穏やかでちょっとルーズな緩い雰囲気の発音がすっかり影を潜め、つややかで丸みのある粒立ちのいい音がどんどん前に出てくる。新作楽器の元気のいい鳴りっぷりの良さと、100年ほど経過した楽器ならではのこなれた音質がミックスされたような印象。

 

表板をはがして内部を徹底的に修理し、ペグホールを埋めて穴を再度開けるブッシングも行い、ペグも黒檀からローズウッドに交換したそうだ。クラックの手当てやニスの修理も万全で外見もピカピカ。以前の緩い発音はバスバーの膠が緩んでいた結果だったらしく、その辺をきっちり再接着した結果、音に締まりが出てきたし、4本の弦のバランスも良好となり、以前のようなA線のみが鳴り過ぎる悪癖が解消されていた。

 

修理代はかなりの金額になったが、発音が見違えるほどよくなったから所有者は大満足の様子。腕のいい職人が行う修理と調整で、それまで隠れていた楽器の潜在的能力が引きだされたということだろう。過去にも同じ職人に調整を依頼してきた楽器だが、板割れが原因で大修理をした結果とはいえ、変貌ぶりに驚いた。

 

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