弓の毛は馬の尻尾〜どっちを使う?メス馬?オス馬?

大手楽器店の販売会のレクチャーで聞いた弓の話。トルテ以前の18世紀初期の弓から20世紀のサルトリまで、テーブルに実物を並べていろいろ紹介していたが、記憶に残っている話題は・・・

1)弓の材料のフェルナンブコ(ブラジル特産。現在は絶滅危惧種に指定されている)は、元来は18世紀にブラジルで掘られたダイヤモンドを船でヨーロッパに運ぶときにバラスト(ballast 底荷、船底に積む重し)として用いたものだった。船がヨーロッパに着くと重りに過ぎないフェルナンブコは港に山積。ほったらかされていた。それが風雨にさらされ赤い色素が流れ出すのを見て、染料に使用することを思い付き、さらに弓のメーカーが材料に使ってみたら大当たりとなったのだそうだ。

2)優秀な弓を1本作るにはフェルナンブコを1000キロも切る必要があったという。歩留りがよくない材料なのだ。昔は、まだそんな贅沢が出来たので、1850年頃までに作られた弓にはいい弓が多いという。1000キロの木材の山から60gや80gの弓が1〜2本。。

3)今日の弓の基本形状を確立したのはグランソワ・トルテ。彼は文盲で読み書きができなかった。演奏家ヴィオッティがフランスに来て、トルテと共同で弓の開発にあたったので、それ以後トルテの制作技術が飛躍的に進歩した。1780年代以降の話。ヴィオッティはバイオリン協奏曲を29曲も残したが、パリでオペラ劇場の経営にも手を出していた。手広くいろいろやった人物。

4)初期のオープンフロッグ(毛箱の下に貝スライドがないタイプ)では150本しか毛を張ることができなかったが、トルテがフェルール(半月リング)という金具と貝スライドの装着を始めたので240本の毛を張ることができるようになった。それで弓の性能が向上した

5)トルテ以前は材木をあらかじめカーブした形状に切り取って弓を作っていたが、トルテはまっすぐに木取りした棒を火であたためて反りを付ける手法を確立した。これでスティックの端から端まで木目が通ることになり、剛性や強度が高まった。

6)スワンヘッドの弓とそうでない弓の違いは、ヘッド裏側ののどの部分のチャンファー(面取り)の有無でわかる。

7)フレンチ弓とジャーマン弓の相違点で目立つのは、フロッグの貝スライドの下に金属板を入れるか否か。ジャーマンでは貝の端に下に収めてある金属板の縁が見える場合がある(画像参照)。

8)弓に張る馬の尻尾の毛は雄馬のものに限られる。雌馬の尻尾は、排尿時にしょっちゅうおしっこがかかるので毛がボロボロになっている。使い物にならないそうだ・・・・などなど。




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