個人レッスンの発表会 その2

16時から始まった大人の部では、客席はガラガラになった・・・子供組の関係者が一斉に退席したためである。座席で聞いている人は出番待ちだったりするので、完全に内輪の催事といった感じ。

「浜辺の歌」の合奏から演奏が始まり、ボッケリーニ「メヌエット」、エックレス「ソナタ」、バッハ「アリオーソ」・・・と続いた。ところが、舞台に先生も登場して一緒に同じパートを弾いているではないか(!?)

ピアノ合わせの事前練習の時も、先生が介護伴奏(ユニゾン)している光景をお見掛けしたが、本番でも同じことをするとは思っていなかった(後で聞いたら、このお教室の発表会はいつもそうなのだという)。

私は、かなり昔、某音楽専門学校(今は4年制音大に昇格している)に入学してバイオリンを習った。一応、学生なので学期末の定期試験として先生方の前で弾かされる発表会が年に数回あり(初級でも暗譜で弾く。ザイツのコンチェルトなど長い曲もやらされた)、毎回、冷や汗ものだった。

先生たちも相手は学生だから、遠慮もなく手厳しいことを仰っていた。現在、私が通っているような大人向け音楽教室の微温湯的環境とは大違いだった記憶が残っているため、先生と合奏する演奏を見ることになるとは想像していなかった。

ブレヴァール「コンチェルト」、ハイドンハ長調コンチェルト」といった難易度の高い曲がプログラムを飾ったが、いずれも先生の介護伴奏付き。当然ながら聞こえてくるのは脇にいる先生のチェロ。中央で弾いている主役は、気の毒にエアーチェロみたいに見えた。そんな二人羽織的演奏が続いたので、先生の発表会を聞いているような心地になってしまった(あの日、A先生は、いったい何回、コンチェルトを弾かれたのだろう)。

子供の部では、3歳児が途中で立ち往生しつつも孤独な演奏をしていた姿を重ねてみると、大人は甘やかされているなあと思った。もちろん先生の伴奏なしで(本来の発表会のスタイルで)一人で弾いた人も少なくなかったが。

私の出番は中間を折り返し、後半の最初ぐらいだった(全部で27演目)。ソロの前に合奏に参加するチャンスが2回あったので、持参した弓2本を交互に使って、舞台での弾き心地を事前に試してみた。ヴィネロンは音の粒立ちがよく、JPベルナールは図太い音が出た。結局、ソロの本番では、音離れがよいヴィネロンを採用したのだが、これはミス・チョイスだったかも。

JPベルナールなら、しっかりと弦に食いついて太い低音を奏でたはずのブレヴァールのソナタ冒頭の3重和音。がっつり弦を噛むはずのヴィネロンは、低音側の和音でいきなり上滑り。低音がするっと抜けて結果的に和音が鳴り響く時間が短くなってしまった。この曲、最初の3つの和音を弾くテンポが曲全体のテンポを決める。ピアノ伴奏の先生も、そこに合わせてくる。というわけで、その後の展開は、いつもより速い速度で弾く羽目になってしまい、結局最後までそのまま行ってしまった。

演奏後、客席で聞いていた人に感想を聞いたら「音が大きかった。教則本の付属CDと同じ速度で弾いていたのが凄かった」とのこと。音量が出ていたということは、演奏速度に指がついてゆけず、もつれてトチッた箇所もバッチリ聞かれたわけだ。自宅練習では相当な速さで弾いて遊んだこともあったが、本番のテンポ設定は予定外。弓の上滑りが原因の不可抗力で、速く弾いた分だけ粗が目立ってしまい、やれやれだった。

ちなみに本番で使ったエンドピンは、ふだん使い慣れているカーボンの中空パイプではなく、見附精機工業製の鉄芯+真鍮のハイブリッドタイプにした。がっしりした硬めの音質で音量も増えるから効果はあった。 しかし冒頭の和音でヴィネロンがこけたのは、いつもよりハードなセッティングが影響したのかもしれない。

20時には全部のプログラムが終了。その後、皆さんと一緒に近所の居酒屋で生ビールをおいしくいただき帰ってきた。



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