弓の補助具もいろいろ

チェロの修理をお願いした工房で、在庫弓を試させてもらった。修理が完了したイタリアンで弾いてみたのは F. N. Voirin 

つややかで丸みのある甘い音が出てきた。弓圧を軽くかけるだけでスムーズに楽器が鳴るので嫌な雑音が出ない。もう素晴らしいとしかいえない。比較しようと思い、以前、この店で購入した Vigneronをケースから取り出して弾いてみた。

曇った音色。鈍い反応。平板な音・・・??

持ちやすいように竿に嵌めていたソフトグリップ(児童用の筆記具補助具)が音を吸っていると店主がいうので、その場で外してみた。

あっらら(!)

エッジがキリッと立って、すっきりした音に変わった。倍音が明らかに増えている。反応性もシャープになった。

ソフトグリップとかプニュグリップといった筆記用具用の小物を弓竿に装着すると、持つ部分が太くなって弾きやすくなる=ボーイングが安定するので音も良くなる、という情報は元N響バイオリン奏者の根津さんのブログで知った。
http://www.nezu.ms/tubuyaki.html (2012年2月29日、4月12日、6月20日、7月18日の記事など)

ウレタンか何かでできている柔らかい素材で、確かに持ちやすくてボーイングが安定する面もあるが、弓竿の振動を吸収して音色を微妙に変えるデメリットもあったようだ。根津さんも最終的にはこの手の小物の使用は中止したらしい。

しかし、プニュグリップは簡単に脱着できるから、必要に応じて使い分ければいいと思う(素材の伸縮率が小さいソフトグリップは簡単には脱着できない)。長時間弾く場合は、プニュグリップを付けておくと疲れにくいから重宝する。工房の店主の話では、弓を落とさないために装着する人もいるそうだ。

確かに疲労がたまってくると注意力が散漫になり、手元から弓が滑り落ちることがある。昔、バイオリンでオケに参加していた時、長時間の練習中に弓を落とした経験は、私もしている。冷房がほとんど効かない真夏の体育館での練習中。右手から Pierre CUNIOT がするりと抜けて飛んでゆき、隣席の女性のスカートの上に落下した。その時の情景は、今でもスローモーションビデオのように思い出す。さいわい、フロッグが先に軟着陸したので破損事故にはならなかったが、冷や汗がどっと出た。演奏中に手汗の影響が出てくる場合や、指の力が弱まってくる場合などでは、プニュグリップを装着するメリットはあると思う。







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