チェロの退院 その2

先週、工房に入院したジャーマンチェロを引き取りに行った。 剥がれの修理だけではなく、ペグの穴(弦を通すための穴)の位置が、端に寄り過ぎていて、弦を巻きにくい状態だったのを修正してくれていた(新たに穴を穿っただけです)。

それと、A線が過剰に鳴る状態だったので、A線とD線を巻きつけるぺグをカザルス巻風に入れ替えてあったのは、元に戻されていた。ペグボックス内の弦の端末が、上ナットからペグまでの距離が長くなるようにすると、いくらか発音が鈍化する。ペグボックスの一番奥にあるD線用のペグにA線を巻いてやると、上記の距離が長くなって、多少はおとなしくなるのだ。店主には、単純に、間違えていると解釈されてしまったが 。ちなみに弦は4本ともヤーガー。

A線の突出を押さえるためには、駒を新調して、現状のベルギー駒からフランス駒に変更するといいだろうとのことだった。華奢なベルギー駒は高音がよく出るが、出過ぎる楽器の場合は、フランス駒の方がバランス的には有利らしい。

剥がれを修理したジャーマンの鳴りは、ソリッドになっていた。 そこで、お店の在庫の中でピカイチのF. N. Voirinを出してもらった。最近、この店に来るたびに触っているフレンチ名弓である。

甘い音色の倍音がホワ〜ンと立ち昇り、渋キャラ・ジャーマンが官能的に歌い始める。楽器のグレードが数段階上がった感じである。軽く弾いてやるだけで楽器がきれいに鳴り、右手のコントロールをちょっと加減してやると、音のニュアンスがどんどん変化する。73gしかない軽量級ということもあるが、並みの弓では、こうはいかない。

「このチェロで十分ですね」と工房の奥さんがいう。確かに不足のない鳴り方だった。いい弓を使うと、楽器のポテンシャルが変わってしまう。毎度のことながら、このクラスのフレンチは凄いと思う。





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