ウィトナー・ブレード・テールガット

テールピースに使うコード(テール・ガット)の材質を変えると楽器の発音性能が変化する。私がチェロで使った経験があるのは、針金、ナイロン、マルチファイバー 高強度アラミド繊維(ケブラー)の3種類。この他、バイオリンではタングステンやチタン製も使ったことがある。

プラスティック製のテールピース(AKUSTIKUS)に装着されている針金はどういう音になるのかよくわからなかった。切断する以外には外せないので、別のテールガットと交換して音の変化を確認できないからである。ナイロンとケブラーでは、前者はマイルド、後者はナイロンよりも軽くてドライで明るい音色になる。高音には有利だが、低音はふくよかさが減ってスリムになるから一長一短。

バイオリンで使ってみたタングステンは、強靭で音がどんどん前に出るようになったものの、ちょっと硬く締まり過ぎる傾向があった。音がぼやけ気味の楽器には相性がいいかもしれない。チタンは独特の軽くて甲高い音が出た。金属製品は個性が強いので、好き嫌いがはっきり分かれる。

最近、ネットでドイツのウィトナー社製のチェロ用ブレード・テールガットというものがあるのを知り、さっそく取り寄せてみた。

お店のHPの宣伝文句は以下のようなもの。

Wittner Braid Tailgut チェロ用(4/4-3/4)2,400円 (税込) 送料160円

「超軽量10gです。さすがWittnerいいものを作ります。ブレードで強いです。この品質にこだわったテールガットをつけていると演奏意欲も湧くのではないでしょうか。^^」


紐1本で演奏意欲が湧くなら、買うしかない♪

ブレードとは網紐のようなもののこと。実物は確かに細いロープ状の本体に、金属製のねじを両端に付けたものだった。ロープの材質は何だろう?極細の金属を束ねて編んだように見えた。これなら音は相当に締まってくっきり。反応が早いシャープな音色になりそうな予感が・・・

しかし!

ロープが短いのである。フルサイズ用を取り寄せたが、普及しているナイロン製テールガットに比べると全然長さが足りない。これをテールピースに装着した場合、テールピースの下端は下ナットの上か、多少楽器の外に出っ張る位置に来る。

さらに具合が悪いことに、ロープの両端についている金属製の雄ねじの直径が太くて、テールピースの穴に通らない。ボアダルモニ、ボガーロ・アンド・クレメンテのテールピースでは全然ダメ。プラスティック製のテールピースも同様に穴が小さくて装着不可。

長さを調整するための金属ねじなのだが、もともと全長が短小過ぎて、調節も何もできない上に、太さがありすぎて使えないとは・・・??

結局、お店に電話して返品することにした。店員さんによると、この手のクレームは初めてだが、メーカーが規格を変更したのかもしれない・・・とか。 そこの店ではチェロのテールピースなどいろいろと販売しているので、在庫品を見れば、これが太い、短いで使えないことはすぐに分かるだろう。

ネットで買う場合、実物のサイズがはっきりしないので、こういうケースもあるわけだ。やれやれである。 ネット上には専門家の意見として、素人がこういうパーツをいじるべきではないと書いている人もいる。確かにそういう面もある。テールガットの長さをどうするかで、いろいろと音に影響が出てくる。弦楽器工房で調整してもらったテールガットの長さは、私は勝手に変更しないようにしている。駒からテールピースまでの間隔は、結構デリケートなものらしい。






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