チェロ仲間のお宅で練習

数日前、グループレッスンでご一緒している女性のお宅にメンバー2名が集まって、合計3名で練習をした。彼女のお宅の玄関先には、カルマンギアとか、昔のVWの車が数台並んでいた。御夫婦そろってヴィンテージ・カー好きとのこと。その庭先に大きなログハウスがあったのにも驚いた。山荘風の内部は、古いギターがいっぱい。隅にダブルベースも置いてあった。

チェロの練習をしたのは本宅の方で、昭和50年代の鉄筋コンクリートの建物。20畳以上の広さがあるリビングルームの床はフローリング、壁はコンクリート。残響があって、弦楽器を弾くにはちょうどいい具合だった。 窓も防音対策してあるそうで、夜に楽器演奏をしても大丈夫なのだそうだ。

「アンダンテ・フェステーヴォ」は、ファーストバイオリン、ビオラ(チェロで代用)、チェロの3パートだけだったが、合わせる回数が増えているので、皆さん合わせ方に慣れてきた。次に「アヴェ・ヴェルム・コルプス」をやった。最初、私は第1バイオリンのパートをオクターブ下げてチェロ用に編集した楽譜を弾いてみた。しかし、伴奏と音域が重なってしまい、演奏効果が上がらなかった。やはりバイオリンで弾かないとダメのようだ。

3曲目はこの家の主が発表会で弾くバッハのメヌエット(実はペツォールト作曲)を、チェロの伴奏で弾いた(伴奏パートを弾いたのは私)。ソットヴォーチェでささやくように主旋律に寄り添って行く場合、ヴォアランの弓は、これ以上はないと思えるほどぴったりだった。柔らかく甘い音色で白丸(二分音符、全音符)をずーっと弾く場合、腰のソフトさは弱点にならない。 途中から私も主旋律を一緒に弾いてみたが、そこでもチャーミングで愛らしいメヌエットの表情が簡単に作れた。剛弓タイプの場合は、よほど脱力しても細部が角張ってしまい、こうはいかない。ヴォアランで弾くと、まろやかな音が出るが、弾いている本人には、楽器からベールを1枚はがしたような鳴り方をしているように感じることがあった。不思議な弓である。

休憩時間に、こちらに同行した男性が使っているエンドピン(見附精機工業のトリプル・ブリランテ)を借りて私の楽器(プラットナー)に装着してみた。それで、どう音が変化するのかを確かめてみた。

トリプル・ブリランテは、タングステンの芯材の周囲にチタンを巻いて、さらにその外側を真鍮で被覆した3重構造のエンドピンである(10mm径、1本3万3千円)。鉄より重たいタングステンと軽量なチタンの組み合わせから出てきた音は・・・A線は透明感のある浸透力の強いカッチリした高音が出た。他の3本の弦は引き締まった硬めの音で、C線などはかなり締め上げてダイエットしたような感じになった。ふくよかさと引き換えに、音が前に出る攻めが得意なキャラクターになるようだ。楽器からソリスティックな音を引き出すエンドピンといっていいだろう。その一方で、人工甘味料のようなというか、整形美容できれいになった顔のようなというか、整い過ぎて隙がない不自然さも感じられた。

見附精機工業のエンドピンは、私も、鉄心に真鍮、チタンに真鍮、カーボンに真鍮、極太カーボン(16mm径)、無垢のチタンなどを持っている。どれも面白い味があるものばかりで、時々取り替えて遊んできた。だが、複合素材のエンドピンは、異種の材料のそれぞれの持ち味(癖)が干渉しあって、若干屈折した性格を音に付与する傾向がある。それを含みのある華やかさと感じるか、単なる厚化粧とみるかは、人それぞれ。私は、最近は、単一素材でつくられたエンドピンを使う機会が増えている。いろいろな素材の遍歴を経て、シンプルなエンドピンに戻した時のストレートな音色に、ホッとしたりするのである。












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