グループレッスン有志の自主連 その1

いよいよ今週末に迫った発表会に備えて、グループレッスンのメンバー宅に有志が集まって練習をした。小雨が降る中、 午後4時過ぎに伺ったら、女性二人(家主と最高齢のメンバー)で練習しておられた。

さっそく「アヴェ・ヴェルム・コルプス」を合わせてみた。二人とも音程がいい。普段からしっかり練習していることがわかる。その後、各人が発表会で弾く独奏曲を披露した。

70代の女性はアメイジング・グレイスを弾かれた。初心者にありがちな終始メゾピアノぐらいの弱めの音量しか出ない。 p と f の差がほとんどない。まずは、そこからさらい直した。

弓の配分を考えて弾いていないため、二分音符などで弓が足りなくなり、音量が尻すぼみになっていた。長い音符を弾く場合は、その直前で弓を元まで返すか、先まで使い切っておく必要がある。この動きをして、新たに弓の端から弾き始めないと、途中で足りなくなる。どこのポイントで、次に弾く弓の準備をしたらいいかを楽譜を見ながら確認した。彼女は暗譜で弾いていたが、こういった細かいポイントは失念していたようだ。

いくつかの手順を踏んで、再度弾いてもらったら、明らかに音量が増えて、豊かに歌えるようになった。ところがその直後、D線のペグが変調をきたし、回しても緩んだまま。締まらなくなった。ピッチは下がったままである。最近、彼女の楽器のA線を交換するお手伝いをした時も同じ症状が出て、楽器屋さんに持って行ってもらったことがあった。

彼女のチェロのぺグは機械式のタイプで、楽器側のペグボックスの穴に接する部分は固定式になっている。外筒は回らず、内側のピンが回って調律する仕掛けである。非常に軽く回るので、テールピースのアジャスターを使う必要がない優れものだが、時々、いうことを聞かなくなる。普通のペグなら引き抜いてチョークを塗ってやれば止まるが、このタイプではそれが出来ない。ということで、再び楽器屋さんに行くことになった。今回のように不具合が出た時の対処法を教わるよう念を押しておいた。本番直前でペグが止まらず、調律不能になったら困ったことになる。

彼女が楽器屋さんに向かったあと、しばらくして家主のご家族と一緒にカレーを御馳走になった。ペグが不調になった女性が、本日鍋ごと持参した差し入れのカレーだという。何種類かの豆とトマト、玉ねぎを煮込んだスープカレーだった。作り手のお人柄が感じられるまろやかで優しい味だった。小ぶりの玉ねぎを切らずに丸ごと煮込んであったのが珍しかった。見た目がかわいく、盛り付けた時のアクセントになる。スプーンで触れた玉ねぎは柔らかく、ほろりと崩れた。

午後8時過ぎ。今度は仕事が終わった若手女性がやってきた。ピアノ伴奏のお友達と一緒。グループレッスンの中で最年少のメンバーである。家主さんの庭先にあるログハウスに入ったら二人とも興奮気味で、携帯で写真を撮りまくっていた。ピアノ合わせで弾いたのは、映画音楽の「ウヲアイニ・アラベスク」 。ビブラートがかからない点を除けば、暗譜で十分に弾けていた。最後の音だけでもビブラートをかけるやり方を検討してもらった。飲み込みが素早く、すぐにきれいなビブラートが出来た。若い人の上達スピードは、中高年とはだいぶ違う。

その後、レッスン室に使っているリビングに移動し、「アヴェ・ヴェルム・コルプス」「アンダンテ・フェスティーヴォ」をさらった。達者に弾ける若手が加わったチェロパート(2名)は音量豊富で、私のバイオリンは押され気味だった。今日は本番で使うことにしたGio Batta Morassi 1983を持参した。いままで本番に使う予定で練習に持ってきていたIvano Coratti 1996は、高音が先鋭に出るから、チェロに対抗するには有利。しかし、ミスったらもろに目立つ。安全性を優先するなら、響きが柔和で、アンサンブルに溶け込みやすいモラッシを使うのが順当と考えることにした。音質がこなれて穏やかな分、チェロの低音の壁に立ち向かうのは、しんどいところがあるが、やむを得ない。

ちなみに、若手が使っているチェロ(ドイツ製 1996)は、グループレッスン関係者からの借り物だという。ちょっと弾いてみたら、弦高がかなり高くて押さえるのが大変な楽器だった。発音もボケている。弓もブラジルウッドのヘビー級で、これらで練習したら指や腕の筋トレには役立つが、音楽をするのはつらいものがある。使用者は他の楽器を知らないので、使いにくい状態が当たり前だと思っている。

そこで、調整済で普通に弾ける私の楽器と弓を試してもらった。弓が簡単に返せて、アップボウがこんなに弾きやすいとは思わなかったとか、 ハイポジションを押さえるのが楽とか、ビックリしていた。馬力のある弾き手なので、私のプラットナーから随分と元気な音を鳴り響かせていた。途中で持ち替えた金弓と銀弓の音色の違いもはっきり出していた。演奏能力は相当に高いようだ。彼女の楽器は借り物だから仕方ないが、初級者ほど高性能な楽器と弓を使わないと、無駄な労力を費やし、回り道をすることになる。乗り物に例えると、子供用三輪車から競技用自転車に乗り換えたぐらいの差はある。楽器習得に使う道具選びは重要である。

そんなことをしている間、彼女のお友達がバイオリンを弾いてみたいというので試してもらった。バイオリンに触るのは、今日が初めてだそうだ。音程の取り方を教えてあげたら、すぐに楽器の仕組み(調律方法)を理解して10分もしないうちに、キラキラ星のメロディーを弾き始めた。ピアノを弾く方なので、カンがいいのだろう。若い人の柔軟性に、またしても感心してしまった。今日の練習が終わったのは午後10時半頃。明日の夜も特訓をする予定である。若手は明晩も来るとのことで、チェロを預けて帰っていった。



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