チェロのレッスン 55

最初はト長調の音階練習から。C線のGを1の指で押さえて弾き始めるから、なかなか第1ポジションには戻って来ない。第4ポジションのあたりで、弓の毛を弦に嚙ませて、十分に重みをのせてから音を出す練習を重点的にやった。フォルテのところで要求される強い音が出ないとか、個々の音の立ち上がりが曖昧だと、他の部分が上手に弾けていても、演奏が平板で下手なものに聞こえてしまう。音が鳴り始める瞬間の気合いは重要なのだ。グループレッスンのS先生も、弓を急速に動かし、かつ目いっぱい使ってしっかりした音量を出す「マルテレ」練習の必要性を、たびたび口にしておられる。両先生は同じことをおっしゃっている。チャカチャカ弾けるようになってきたところで基礎練習に戻ったのは、マルチェロソナタで骨太な音が求められていることもあるが、このタイミングでのボーイングの見直しは、ごもっともである。

弦に腕の重みをのせて弾くといっても、出だしに余計なアクセントを付けてはいけない。右肘の位置は、弓を持つ右手首よりも低い位置にキープすることが肝要。そのためには脇を閉じて、不用意に右腕を高く上げないように注意する必要がある。弓を押さえる親指がテコの支点となり、人差し指で弓に圧をかける。この場合の圧力は、右肘を低く構えることによって得られる右腕全体の重みを使うので、弓を持つ右手指に、腕の重量をぶら下げるようなつもりで弾くことになる。A線やD線では右脇が開き気味になるので、この点は特に意識しておく。

音量が出せない人は、右脇が開いて、右肘が高い位置に来ていることが多いそうだ。その姿勢で弓に圧力をかけようとしても、右手指の筋力だけしか使えない。図太い音量を出すのは無理がある。右腕という重量物の質量を効果的に弓に乗せるには、どういう姿勢にしたら力学的に合理的かを考えれば、おのずから答えは出てくる。

マルチェロソナタホ短調は8回目。上記の方法を実践しながら練習した。第2楽章の5小節4拍目〜6小節にかけての拡張を使ったポジション移動で、1の指が開きにくいので対処法をたずねた。ここだけとは限らないが、左手首は丸みを持たせ、手首が最高点にあって、そこから左指がなだらかにカーブしながら垂下してくるフォルムが理想形とのこと。拡張の時に指が突っ張ってしまい、なかなか理想形では弾けないのであるが、左肘をやや高いポジションにキープさせてやると、そういう構えを取りやすいとの説明があった。右肘は低め、左肘は逆に高めにするのがいい形ということ。確かに、両方の肘が上がっていたら妙な格好だし、両肘が下がっているのも、だらけているようでよろしくない。

楽器の角度についても教示があり、エンドピンを短かくし、チェロ本体を立て気味にして自分の体に寄せてくると、拡張がしやすくなるという。座面の低い椅子に交換して、そういう姿勢を取って弾いてみたら、確かに弾きやすかった。手先だけの問題ではなく、体全体の姿勢を研究する必要があるわけだ。





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