チェロのレッスン 59

バッハ 無伴奏組曲第1番「メヌエット」の2回目。個人レッスンのA先生の弾き方は、角を丸めて朗々と歌わせ、テンポを揺らしながら濃い表情を付けてゆくもの。カザルスみたいなゴツゴツした武骨なバッハではない。ピリオド系の鋭いスタイルとも違う。私はインテンポで軽快に弾きたいところだが、濃い味系のバッハにチャレンジ。

コッテリバッハのポイントは、刺激的な尖った音は出さないこと。メヌエット1の冒頭から、ソフトに滑らかにとの御指導。3小節の3拍目をやや遅くしてソフトに弾いて、次に出てくる重音にスムーズにつなげてゆく。同様に7小節目の3拍目もやや遅くして、次の終結部に滑らかにつなぐ。繰り返しの後の9小節の後半は拡張形なので親指に注意。12小節最初のAは深い音色でテンポを落としてじっくり弾く。この辺りのスラーがかかった箇所は、全弓を使ってレガート気味に、音量をしっかり出してゆくことが求められる。

15小節3拍目のB〜Dis〜Eは、3〜1〜3の指で弾くが、3の指は押さえたまま1の指だけを伸ばすこと。

メヌエット2の32小節のFisはデクレシェンドで弾いて、ソフトに音を絞る。36小節の3拍目もリタルダンド。42小節の3拍目のEs、44小節のD の二つの音は、十分に音の長さを保って弾いて、最後に弓をさっと引き上げて弦から離し、余韻を響かせる。メヌエット2の後半の繰り返しは省略して、メヌエット1に戻るとのこと。

総じて、フレーズの終わりはリタルダンド気味に弾き音量も下げて、フレーズをしっとりと閉じる感じにする。次の新たなフレーズの冒頭で元のテンポと音量に戻す。これを繰り返しながら、おおらかにゆったりと弾いてゆく。 無伴奏なので、自分のペースでテンポを揺らしても構わないとのことだった。私としては、まずはインテンポでキッチリ弾けるようになってから、という気がする(現状は、お家の事情でテンポが動く場合もある)。


レッスンが終わった後で、私が集めた無伴奏の楽譜10種類をご覧に入れた。カザルス版などは冒頭からフォルティシモ。アクセントだらけなので、ビックリなさっておられた。フルニエ版は見た目もエレガント。トゥルトリエ版は、見慣れないヒゲ印の連続が面白いとの感想だった。

トゥルトリエ考案のヒゲ印は、音楽を呼吸させるタイミングやフレーズに与えられた意味を図示したもの。トゥルトリエの2度目の全曲録音(1982年、EMI)を聴くと、確かにこの通りに弾いている。録音と同時期に楽譜も出版しているので、トゥルトリエの解釈の結論といえる内容なのだろう。ちなみに彼の1回目の全曲録音(1960年、EMI)では、ここまでフレーズごとの性格を突き詰めて弾き込んではいない。



カザルス版



フルニエ版



トゥルトリエ版



スズキ教本


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