松脂道楽

松脂の缶入りベルナルデル(グスターヴ・ベルナルデルとレオン・ベルナルデル)の優秀性を知ったのは1年前。某プロチェリストのブログからの情報だった。

「勝負の時には缶入りベルナーデル、通称缶ベルを使用します」
「『缶ベル』に並ぶ品質のものは現在市販されていません」
「製造中止になってしまった名品、演奏家が血眼になって探しています」

・・・といった文言が並んでいた。

普通の松脂は、喰い付きがいいものは音が粗め。音が滑らかなものは、さらっとしていて噛みが弱い。相反する要素を両立するのは困難らしいが、100年前のヴィンテージ・ロジンに、どれほどの性能があるのか?

2012年8月、試しにグスターヴ・ベルナルデルの真鍮缶を入手してみた。音は、確かにスムーズで艶もあり、雑味がないクリアなものだった。噛みの良さもたいしたもので、音量が朗々と出る。当時のレシピが失われ、今では再現できないという話が納得できる性能だった。

以来、缶ベルが売りに出るたびに集めてきた。最近、幸運にも未使用のグスターヴ(真鍮缶)を手に入れた。オリジナルの巻紙がきれいな状態で残っている珍品である。未使用品を譲ってもらった方の話では、チェロを生業とする友人にグスターヴをプレゼントしたら、後日の反響が期待以上に大きく、かえって恐縮してしまう程に感謝されたそうだ。以来、缶ベルの凄さを再認識したとのこと。缶ベルとチェロとの相性は格別のようだ。

手元にはグスターブの真鍮缶5個(1個は缶がなく紙筒入りだった)。レオンのアルミ缶と紙筒入り(内側に金属容器が入っている)が1個ずつ。合計7個がある。グスターヴ・真鍮缶→グスターヴ・アルミ缶→レオン・アルミ缶の順番で新しくなる。私の好みは、最も古い真鍮缶。このタイプは音の透明度に優れ、音色の華やかさ、しっとり感、噛みの良さが高いレベルで共存している。

一方、やや後年の製造となるレオン・ベルナルデルは、粘りはいいが、音は若干曇ってマットなタッチになる。 ちょっと地味だが、冬の乾燥期には、レオンのしっとりした穏健な音色も悪くないと思う。レオンから粘り気を取って、10倍に希釈し、噛みの弱い超薄味仕立てにすると、現在、流通しているポーチ入りベルナルデルに似てくるような気がする。ブランド名は同じだが、現在のベルナルデルは全くの別物。昔の缶ベルに遠く及ばない。

松脂は古くなると揮発成分が失われ、性能が劣化すると言われている。缶ベルは100年を経過しているから、大半がヒビ入り。表面はボロボロ。見ようによってはゴミみたいである。そんな老化の著しい松脂が、驚きのパフォーマンスを発揮する。現在の松脂では真似出来ない濃厚な味があり、一度使ったら病み付きになる。というか、もう、現在の松脂は使う気が起らなくなる。7個揃ったので、たぶん一生分を確保。あとは、使い切るまで練習に励むのみ(?)



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