バイオリン 見せ合いっこの会

ヤフオクでバイオリンを売ったり買ったりしている常連さんが主催した情報交換会があり、お呼びがかったので出席した。私は2011年12月からチェロに転向したから、バイオリンへの興味は失せてしまったが、ブログやバイオリン関係のBBSで以前からお名前を存じ上げていたKさんが出席なさるという。ウェブ上でしか知らないご本人にお目にかかってみたいと思った。参加者は自分の楽器と弓を持参して披露する。弾いてないので寝た子状態のモラッシ/コラッティと弓8本を2本のオブロングケースに入れて、新横浜駅近所の会場に行った。

スケジュールは日曜日の午後2時から6時まで。出席者6名。会場は普通のオフィスビルの2階にある大きめの部屋だった。椅子がいくつかあるだけのガラ〜ンとした空間で、壁には鏡が貼ってあった。ダンスのレッスンなどにも使っているのだろう。

主催者は都内のお医者さんK氏(57歳)。4歳の時にバイオリンを習い始めるも中断。学生時代に復帰したそうで、今では全日本医家管弦楽団などで弾いているそうだ。4年前からヤフオクで掘り出し物を漁り始め、現在100本以上(!)のバイオリンを集めたという。買うのが病み付きになった(お医者さんでも治せない)典型的コレクターだ。お持ちになった楽器や弓は、ヤフオクで落札したものが大半。楽器コレクターだった故人の遺族が出品した楽器などを買っているらしい。楽器を6本、弓を5本並べてくれた。楽器スタンドも用意され 、ずらりと並んだ様子は、ほとんど販売会みたいだった。

このお医者さんのヤフオク友人のコレクターA氏(56歳)は、5年前から楽器を買い始めたそうだ。eBayを通じて知り合ったチェコとイギリスの楽器コレクター(故人)の孫からいろいろ買っているという。私はこの方にヤフオク経由でフィッティングパーツを売ったことがあり、同時に彼から缶ベルなどを買っている。何度かメールで連絡したご縁で、今回のイベントに招いてもらった。

今回、お目にかかるのが目的だったkiutさんは、ブログやBBSの書き込みでその博識を存じていた方。持参された楽器は都内で工房を開いているガンさん(中国人)の2006年ストラドモデルと、アントニオ・カペラ1977年。弓は杉藤浩司さんの特製弓2004年とエリック・グランシャン。かねてよりブログで拝見していた楽器と弓である。さっそく試奏させてもらった。とはいうものの、同時に他の方も違う楽器を弾いているので、室内で音が混ざってしまい、軽やかな発音性能がわかった程度。杉藤弓は超軽量で、私所有の同じ作家の特製弓2003年とはまるで違うキャラクターだった。グランシャンは締まった弾き心地で、なかなか良かった。私のモラッシを弾いてもらったら、いつまでも弾いていたくなる楽器との感想をいただいた。

都内から参加のAさんは、ステファニーニ1978年とアルバネッリ2004年を持参された。2本ともこなれた温和なキャラの発音だった。弓はアルシェのキットを自分で完成させたものを持ってこられた。キットを買っても最後まで仕上げられる人は稀だそうだ。削りや反り入れを自分でやるなんて、器用な上に相当な凝り性でなければ手が出ない。この自作弓はなかなか性能が良くて、参加者にも評判が良かった。ちなみにAさんが新宿の楽器店に委託で売りに出しているオールド弓は、kiutさんが実物をお店で見ていて、あれはいい弓だったと褒めていた。狭い世界である。

最後に遅れて来たWさんはバイオリン歴36年のベテラン。私はこの方からも、ヤフオク経由で缶ベルを2個売ってもらったのを思い出した。楽器修理専門の職人さんと懇意にされているそうで、ストラドを借りている話をされるのでビックリしてしまった。借り物なので今回は持参されなかったが、替わりにイタリアで修業した職人がパリで作ったという18世紀のオールドを持って来られた。黒辰砂が濃く塗られた外観で、フレンチには見えない雰囲気だった。 バラバラになって壊れていたものをパリで見つけて買い、きれいに修復された由。

弓はメアー、パジョーの2本を持参された。ミランやラファンの鑑定書もある由緒正しい弓である。19世紀前半のフレンチオールドが来たので興味津々。さっそく触らせてもらったが、羽根のように軽いと形容されるパジョーは、まさにそんな感じ。メアーもやや軽めのタッチだったが、竿の強さはしっかり。芯のある発音で、くっきりしていて、まろやかさもある優れものだった。このクラスの弓はさすがである。この方はナガスクジラのひげを入手するルートを持っているそうで、2本ともイギリス流儀の巻き方でクジラヒゲが巻いてあった。一晩水に漬け、柔らかくしてから強いテンションをかけて巻く作業が出来る職人は、日本には多くはいないそうだ(この話を聞いて、自作弓の作者Aさんがクジラヒゲを自分で巻いたのを知って、さらに驚いてしまった)。

Wさんは業界通で裏話をいろいろ聞かせていただいた。フランスにいって松脂コレクターから缶ベルをまとめ買いし、今でも大量に持っているとか。缶ベルのレシピは現在も残っているが、遺族の相続争いのため製造販売が出来なくなっているとか。そんな話を聞いていたらあっという間に4時間が過ぎてお開きになった。4時頃から外は土砂降りの雨。会合が終わった6時過ぎには小雨になっていた。







にほんブログ村 クラシックブログ チェロへ
にほんブログ村