チェロフェアでお買い物

都心の楽器店で年末恒例のチェロフェアが始まった。チェロを探しておられグループレッスン仲間のY夫人をお誘いして、初日に見に行った。

会場は7階。70万ぐらいから300万円台のイタリア新作まで数十本が並んでいた。私が気にったのはイーストマンブランドの中国製(値段は70万円台)。オールド仕上げの小ぶりな楽器で、滑らかな発音と肌理の細かい上質感のある音色が魅力的だった。楽器内部で響く残響もかなりのもの。新作楽器らしからぬこなれた音だった。Y夫人におすすめしたが、ご当人は気に入らない。

夫人がお気に召したのはドイツのオンハルトのチェロ(125万弱)。楓材のトラ目がはっきり出ている楽器。音はジャーマン新作にありがちの生真面目タイプ。可もなく不可もない優等生的キャラ。店員さんは2割引きにすると言っていたが、保留。

面白かったのはチョコレート色に塗られたアメリカのコルスタイン社のチェロ。楓材の代わりに柳を使った楽器で2011年製。新作らしからぬオールド調の涼しげな音がした。

イタリア新作は少なかったが、サンドロ・アジナリ(300万円台)を弾いてみた。モフモフのトロ〜リ感がある音。最近作だそうで、弾きこまれてないから楽器が眠そうだったものの、官能的な音色はさすが。ジャーマンとの違いは歴然だった。

弓はギヨーム、トマショー、グランシャン、シェフェール、モリゾ、ウーシャなどを触ってみた。どれもピンとこない。そんな中、楽器の試奏用に供された弾き弓が素晴らしいとY夫人がほめている。某メーカーのアニヴァーサリー・スペシャルで、こちらのお店が特注した限定品とのこと。

私も弾いてみた。確かに悪くなかった。赤みの強いオレンジ色の竿の角弓で、フロッグは水牛の角。金具は金製。金糸巻。30周年記念の刻印があり、反対側にはESPOIR(希望)と刻んである。密度が高い材ならではの細身のスティックで、一見軽そうに見えてずしりとした手ごたえがあった。ヘッドは角ばったフォルム。バランスは良好で、頭が重い感じはない。弓の自重に任せておけば楽器が自然に鳴ってくれる腰の強さはかなりのもの。素早い運弓時に、もたつかずに弦に喰いついてくる点も優れている。

展示会場にあった100万前後のギヨームなど、次々に有名ブランドの新作弓を持ってきて比べてみた。操作性能ではそれらに負けてなかった。同じメーカーのより高額な弓とも比較したが、こちらがより魅力的。

Y夫人に、「弓は気に入ったものを見つけたら、即買わないとダメですよ。同じものは手に入らないから」とおすすめしたが・・・即決はなさらない。なので、とりあえず私が買っておくことにした。付き添いでチェロフェアに行った私が買い物することになったのは予想外だった。

今日は20時からY夫人邸に集まって自主練をやる予定が組まれていた。4人そろう予定が、急遽1名欠席となり、3名でレリジオーソなどを23時過ぎまで練習した。その場に、買ったばかりの弓を持って行った。扱いやすいバランス。ビシッとした安定感あるボーイング。発音はクリアで、ズィー音(倍音)が多めに出る(毛量が少なめに張ってある)。パワーと端正な弾き心地の調和、見た目の良さ・・・など、かなりの良弓であることを確認した。

昨年のちょうど今頃、近所のライバル楽器店で開催された弓フェアに3日間通い、高額弓をいろいろ試したことがある。結局、その時は気に入るものがなくて購入しなかった。これはというモノとの出会いが無かったのである。一方、今回は即断即決。このブランドの通常品は、平均点は悪くないけど突出したモノは少ないイメージをもっていた。しかし、こんな例外もあるようだ。フェアに行くなら初日に限ると思った。







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