ブラームスのチェロ協奏曲!?

最近「ブラームスのチェロ協奏曲」のSACD(2枚組)を手に入れた。そんな曲あった?

HMVの宣伝文によると「かつてのDGプロデューサーであり、ピアニストとしても指揮者としても(ミケランジェリとのモーツァルトの録音が残されている)活躍を知られているコート・ガーベン。彼がブラームスの二重協奏曲をチェロ1本の協奏曲へ編曲した作品が初録音としてリリース」という触れ込み。ブラームスのヴァイオリンとチェロのためのドッペルコンチェルトをチェロ独奏用に編曲したものだという。

ドッペルコンチェルトは、当初は交響曲第5番になるはずだった曲。仲たがいしたヨアヒムとの和解を目指してヴァイオリンとチェロの二重協奏曲に仕立て直したと説明されている。今となっては個人的な事情は棚上げし、コンチェルトが少ないチェロ奏者のために、チェロ協奏曲として書いてくれていればよかったのにと思う(チェロ協奏曲を書く計画が変更され、ヨアヒム対策でヴァイオリン・ソロが追加されたという説もある)。そんな声なき声の要望に応えてコート・ガーベンが本来のチェロ協奏曲として復元したのがこの録音の演奏。

何年か前、二重協奏曲を舞台で弾いたことがある(某アマオケのファーストヴァイオリンで参加)。独創はN響の藤森氏と東フィルの三浦氏だった。木管楽器が奏でるコケティッシュなメロディの数々を聞いていると、まだ枯れてない54歳のブラームスの人間味(色気といってもよい)を見せつけられ、へぇ〜っと感心したものだ。渋味の中に官能性が垣間見られて、なかなかマニアックで面白い音楽である。

こういう録音の存在自体を知らなかったので、興味津々で取り寄せたSACDを聞いてみた。ソロヴァイオリンが担当する高音パートをチェロのためにオクターブ下げたり、フルートその他の管楽器に吹かせたり、ファーストバイオリンやヴィオラに担当させたり、原曲の流れを壊さずに改変したご苦労がしのばれる。独奏チェロは(元の曲がそうなので)分散和音をゴニョゴニョと弾く場面も多かったりする。甘美なメロディを弾く瞬間も出てくるが、華やぎが前面に出るわけではない。チェロを教わっているS先生は、縁の下の力持ち的スタンスこそチェロ弾きの醍醐味(!)と力説なさっておられるが、この改変版はそういう点ではチェロらしいといえるだろう。ソロパートに関しては、2楽章などは鬱々とした音楽が続くシューマンのチェロ協奏曲に近い雰囲気もあって、なかなかの聞きもの。ヴァイオリンのソロが大幅に消えた分(たまにコンマスが合いの手を入れるから皆無ではない)晦渋な味わいが増強され、慣れれば違和感を感じず、良く出来た編曲だと思う。なお、2枚組のSACDセットにはヴァイオリンとチェロのための正規版による録音も合わせて収録されている。ソロを弾くユリウス・ベルガーは、バッハの無伴奏組曲全曲録音を2度やっている。1回目と2回目で演奏スタイルがまるで別人。相当な曲者である。


DISC.1
ブラームス(コート・ガーベン編/2001):チェロ協奏曲 イ短調
※世界初録音
DISC.2
ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲 イ短調 作品102

ウルスラ・ショッホ(Vn)
ユリウス・ベルガー(Vc)
ヴェストファーレンフィルハーモニー
指揮:ヨハネス・ヴィルトナー



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