チェロのパート練習

毎月1回ある地元オケのチェロのパート練習があった。今日は7名が参加。S先生のリクエストにお応えし、わたしがベートーヴェン交響曲第7番のCDを持参、それに合わせて弾くことになっていた。選んだCDは超スローテンポの演奏と普通テンポ、快速テンポの数種類。

超スロー演奏は、知る人ぞ知るマキシミアンノ・コブラのCD。テンポ・ジュスト理論(指揮棒の1往復が1拍となる考え方)を実践している人である。ベト7だけでCD2枚組、82分ほどかかっている。間延びしたテンポであることは間違いないが、オケの練習用にCDを聞きながら弾くには好都合。

ということで第1楽章をコブラの演奏に合わせて一同で弾いた。超スローゆえ、さすがに合わせるのは容易だった。続いて普通のテンポのCDに合わせることになり、カール・ベーム指揮ウィーン・フィルのスタジオ録音盤(DG)をかけた。

ベームの71年録音は、折り目正しいテンポ感、各パートの分離がいい透明感のある音、楷書体でどっしりした恰幅の立派さなど、ウィーン・フィルによるベト7録音の中でも最上級の出来と思われる。近頃流行の類型化した軽薄短小ベートーヴェン演奏など、これに比べたら影が薄くなる。 同じベームにはベルリン・フィルとのスタジオ録音盤(58年)もあり、よりヘビーな音楽をやっている。

ベームという人はライブでは興に乗って燃え上がる演奏を繰り広げたが、レコード録音ではくり返し聞かれることを意識して慎重になり、借りてきた猫状態だったと言われている。わたしもNHKホールに出かけて生ベームを聞いた75年のウィーン・フィル来日公演のライブ録音(DG)を聞くと、確かにスタジオ録音の方がクールで抑制した表情になっている。それでも、立体感のある音響を作り出しながら楽譜の細かい指定を忠実に守る姿勢に感心する場面が多い。

というわけで2楽章、3楽章は重要な箇所を抜粋してをベームの録音に合わせて弾いた。ベームの3楽章のテンポはかなり速めだから、ついて行くのは大変だった。なので第4楽章は、再びコブラの超スローCDをかけたが、あまりの遅さに皆さんずっこけ気味。別の音楽に聞こえるので通常版に戻すことにして、今度はカラヤンウィーン・フィルと録音した1959年盤(デッカ)をかけた。カラヤン51歳の時の録音である。一転してテンポは快速特急なみとなり、これまたついて行くのは難しい。同じウィーン・フィルによる演奏でも、ベーム盤の贅肉を削ぎ落したようなクリアな演奏とは大違い。もっと肉感的なふくよかさがある音が聞こえてきた。

他にも遅いテンポの演奏をというリクエストを考慮し、アンドレ・プレビン指揮ロンドン交響楽団の74年録音(EMI)、チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルのライブ89年録音(EMI)も持参したが、今日はかける時間はなかった。




コブラによる第九の超スロー演奏


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