軽種馬と重種馬
日本やイギリスで普及している馬体の大きさによる分類法だそうだ。弓の毛も両方の馬毛が使われている。よく使われるモンゴルは軽種馬である。軽量で俊足。餌は草。最近、モンゴル毛を張ったヴァイオリン弓の弾き心地はサラっとしていてドライ。無漂白毛はテカテカした照りのある明るい音色が出ている。漂白毛の方は漂白剤で毛がダメージを受けているためか、噛みが甘くなり音色も無表情。弾いていて全然面白くない。
より上級のカナダ産馬毛は重種馬だそうで餌は穀物。栄養がいいため毛はしっとり。潤いのある弾き心地。音色も肌理の細かい上質感が心地よい。以前、杉藤の関係者から聞いた話では、あそこは食肉用に育てられた馬の尻尾しか使っていないのだとか。ということは、多分重種馬で餌は穀物。杉藤の名古屋の工場に送って毛替してもらった弓は、確かにしっとりした上等な毛が張られていた。
今回、事情があって一度に6本のヴァイオリン弓の毛替をした。内訳はカナダ1本、モンゴル無漂白4本、モンゴル漂白1本。工房の店主の説明では、カナダ産はチェロ弓には向いているがヴァイオリン弓には強すぎるという。だから大半をモンゴル無漂白で替えた。
しかし、仕上がった弓を弾いてみたら、圧倒的にカナダ毛を張った弓が音質も噛みも優秀だった。あえてモンゴルを選ぶ理由は値段の安さしかない。私はチェロ弓では(店主が勧めるので)カナダ毛しか使ってない。なのでモンゴルの毛がカナダより、どの程度劣るのかは気が付かなかった。試しに1本、モンゴルで交換して様子を見るべきだったが、時間の余裕がなく選択を間違えた。張り替えてまだ1週間だが、全部カナダ毛に交換したくなった。