かまくらシンフォニエッタ定期演奏会を聞く

戸塚駅前の区役所ビル4階にあるさくらプラザホールで「かまくらシンフォニエッタ」第15回定期演奏会を聞いた。新しいホールは450席ほどのキャパ。私は2階席中央最前列に座った。1階を眺めると客席には高齢者が多い。若い人はほとんどいない状態だった。

43名が舞台に乗った室内オケも年配者が目立つ。管楽器には比較的若い女性奏者が並んでいたが、弦楽器はベテラン女性が勢揃い。ヴァイオリンは14名中に男性は1名だけ。ビオラは6名中男2名。チェロも5名中男2名。コントラバス3名は全部男性。

平日、木曜の午前中に練習をするオケのため、時間に余裕がある世代が多いのだろう。チェロには80代の方もいらっしゃるらしいと聞いていた。おじさん二人はともかくも、女性3名は40代ぐらい。予想したより若く、弾き方からプロと思われる方がいた。

指揮者は、見た目かなり若い男性(阿部真也氏)で、オケのメンバーから見ると、子供かお孫さんに相当する世代かもしれない。私は阿部氏が指揮するアマオケ演奏会に何度か出ている。最近はご無沙汰しているが、リハーサルでの指導力の高さを存じ上げていたので、久しぶりに軽快な指揮姿を拝見して懐かしくもあった。フットワークが良い方で、身体全体を大きく使って非常にわかりやすい指揮をされる。

曲目はベートヴェンの「エグモント」序曲。モーツアルトのヴァイオリン協奏曲第5番、ハイドン交響曲第103番「太鼓連打」、アンコールにヨハン・シュトラウス「春の声」。

このオケを聞いたのは今回が最初である。冒頭の序曲で図太い音が出ているのを見て、小編成なのに立派なものだと思った。レイトの奏者が多いオケではこうはいかない。

モーツアルトのコンチェルトでは指揮者がヴァイオリンを持って登場。コンマス席に座って弾き振りをされた。ヴァイオリンを弾きながらも、相変わらず身振り手振りのアクションが大きく、音楽の躍動感を身体全体で表現されていた。ソロを弾いた女性はこのオケのコンミスを15年間務めた方という。モーツアルトの若書きの音楽を、大人のテイストでしっとりと丁寧にまとめておられた。

協奏曲のアンコールには、モーツアルトのヴァイオリンとビオラの二重奏曲が披露された。指揮者の阿部氏は、こんどはビオラを持って登場。元日本フィル首席ヴィオラ奏者・赤星昭生氏が使用していた「1700年ヤコブ・シュタイナー」を譲り受けたものとか。

そのビオラが鳴り始めた途端、ホールの空気が一変した。天の声みたいな不思議な音が響いてくる。柔らかくて茫洋と広がるソット・ヴォーチェの囁きが凄い。彼岸の世界から聞こえてくるような音だった。海の岩礁から航行中の船人を惑わしたというギリシア神話のセイレーンの歌声とは、ひょっとするとこんな感じだったのかもと思ってしまった。地味な楽器のイメージがひっくり返る霊妙なビオラ演奏を聞けたのはラッキーだった。

最後のハイドンは、おっとりとした雰囲気を保ちつつ端正に仕上がっていた。管楽器は達者な奏者が揃っていたし、アンサンブルの精度もアマオケとしては良質。カッチリまとめるというよりは、楽しみながら余裕で弾く感じだった。メンバーの皆さんの年の功というものだろうか。

音源が公開された。
http://cello.weblogs.jp/kamasin/


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