弦楽アンサンブル #15

ベートーヴェン弦楽四重奏曲第14番を弦楽合奏で演奏する1回目。コントラバスが加わるミトロプーロス編曲譜を使う。今日は第1楽章のみ練習。
「戦後まもなくの時代はベートーヴェンが人気ナンバーワンで、3位がモーツアルトだった。世の中が豊かになったらモーツアルトが1位、シリアスなベートーヴェンの音楽は3位に逆転した。2位はいつもチャイコフスキー」「この曲は57歳で亡くなったベートーヴェンの56歳の時の作品で、ほとんど死んでいる」とは指揮者の先生の弁。第1楽章はフーガで出来ている。非常にゆったりしたテンポ(Adagio ma non troppo e molto espressivo)で弾かれるため、冥界から響いてくるような謎めいた音を、各パートが互いに探りを入れながら聞き合っているみたいな雰囲気がある。

最初の30分はいつものパート練習だった。第1楽章は嬰ハ短調で始まり、途中でフラット6つ(変ホ短調?)に転調し、すぐにシャープ5つ(嬰ト短調?)になって、さらに嬰ヘ短調と転調してゆく。シャープやフラットの数が多いため練習は音程確認に終始した。開放弦はほとんど使えないからフィンガリングは厄介。テノール記号も混ざっているため、この音なに?となる。ちら見しただけでは混乱するので譜面に音名を書き入れてしまった。音程さえ取れれば、この楽章はシンプルに書かれているので比較的弾きやすい。指揮者は時折出てくるスフォルツァンドの箇所で、急激な音量変化(一気に盛り上げ、すぐに音量を絞る)を素早く行うようにと注意していた。

チェロパートの席次は曲ごとにローテーションで移動することになっているらしい。練習の最初にチェロの先生に決めてもらうか、じゃんけんで決めるかと相談していたが、面倒なので先生におまかせとなった。そうしたら、先生はローテーションにするそうで、私はトップサイドの席が指定された。この展開は予想外だった。2月までの残り7回の練習と、その後の公開練習を最前列で弾くことになる。しっかり練習しないと・・・。しかし、この曲、弦楽合奏版でのCD(バーンスタインとプレヴィンの2人がウィーン・フィルと録音している)を聞いていると、途中で寝てしまい最後まで聞く気力が続かないので困ってしまう。天下のウィーン・フィルの弦楽セクションが弾いているのに退屈するのだ。本来の弦楽四重奏のように各楽器1本で弾くなら緊張感があっていいが、オーケストラがやると焦点がぼやける。大人数の合唱で歌わせて迫力は増したが細かいニュアンスが消え、大味になったシューベルトの歌曲みたいなものかもしれない。秘めやかに奏でられてこそ真価を発揮するタイプの音楽なのだ。

ベートーヴェン弦楽四重奏曲をオケでやると全部ダメというわけではない。マーラーが編曲した「セリオーソ」の弦楽合奏版もCDが出ていて、そちらは結構面白く聞ける(ドホナーニ指揮ウィーン・フィル盤)。シンフォニックな響きになって音量感が増し彫琢が効いた結果、構造性がより明確に浮かび出て陰影が濃くなるのだ。ベートーヴェン中期の曲は外面的な音響美がモノを言う場面もあるようだが、最晩年の音楽にはそういうアプローチは通用しない。両者の質の違いが合奏への向き不向きとなって現れるのだろう。





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