今年のニューイヤーコンサート

元日恒例のウィーンフィルニューイヤーコンサートをNHKの生中継で視聴した。今年の指揮者は2012年以来3回目の登場となるマリス・ヤンソンスNHKのスタジオでは休憩時間に昔のコンサートの映像を小出しに紹介していた。マゼールカラヤンの姿が映ったのは懐かしかった。それとウィーンフィルで第1バイオリンを弾いているザルツブルク出身の若手(母親が日本人のハーフ)も登場し日本語でインタビューに答えていたかな。

肝心の演奏は、ウ〜ン・・・普通。私がTVでニューイヤーコンサートを見るようになって40年ぐらい経つ。昔は生中継はなく録画放送で、80年のマゼールの初回から衛生中継が始まった。たまに放送途中で映像が乱れたりもしたが、生中継ということで毎年熱心に見ていた。以来30数年。映像は綺麗になり、カメラワークも凝ってきたけど、演奏は年々面白みが減ってきているような気がする。87年、亡くなる2年前に1度だけ登場したカラヤンは別格としても、マゼール(「美しき青きドナウ」の演奏直前にした各国語スピーチで「アケマシテ、オデメトウ(ママ)ゴザイマース」と日本語で挨拶したことがあった)、アバドクライバーといった活きのいい音楽をやった指揮者らが物故した現在、ムティやメータらが大御所的存在になっている。音楽界だけのことではないが、往年のマイスターらがいなくなり、現役世代の小粒化が進行しているのではなかろうか。

今回のヤンソンスオスロフィルにいたころは楽しみな指揮者だったが、コンセルトヘボウとバイエルン放送響という2大メジャーオケに抜擢されてからは手堅さが取り柄みたいな守りの姿勢が目立つ気がする。アムステルダムのシェフは、ヨッフムハイティンク〜シャイー〜ヤンソンスと続き、ミュンヘンは、ヨッフムクーベリック〜デイヴィス〜マゼールヤンソンスの順、どちらもマゼールのみ毛色が違った以外は地味キャラが続いている。ヤンソンスもその線だから相性はいいはず。課長タイプの中堅どころ、あるいは銀行員の堅実な仕事、のようで安心感がある。しかしウィーンでワルツとかポルカをやると、鮮度の高いピチピチした音楽とはいかず、落ち着きがある(言い方を変えれば)切れ味が鈍いフットワーク重めの音楽となる。かといってベームカラヤンみたいな重厚長大型の巨匠的スケール感もないのが中堅的芸風・能吏型指揮者の哀しいところ。この手の指揮者にはテオドール・グシュルバウアー、ジェフリー・テイト、クラウス・ペーター・フロール、スラットキン、ドホナーニ、ノイマン、チャールズ・グローブスなど私好みがいっぱいいる。クレバーで上品な音楽をするが、大向うをうならすような華やかさはない。

巨匠型の壮麗な演奏としては、ベームが75年に、今回と同じ会場でウィンナワルツを振ったウィーン芸術週間の演奏会(ヨハン・シュトラウス生誕150周年記念の一連の演奏会のひとつ)が空前絶後の内容だった。FMで聴いたが、雄大なテンポで歌われる皇帝円舞曲の見事なこと(!)その時と同様なプログラムで75年の3月25日にNHKホールでやったウィーンフィルとのライブ録音がDGから出ている。興味がある人は聴いてみるといい(75年の来日演奏会での「美しき青きドナウ」を私はNHKホールの中央最前列で聴いている。生ベームのご尊顔を拝した経験は一生の思い出である)。ベートーヴェン交響曲全集録音の余った時間で録ったという71〜72年のスタジオ録音盤(DG)から3年後。さらにテンポは遅くなり、音楽のスケールはますます巨大化していた。東京での演奏も悪くないが、ホールのアコースティックがムジークフェラインとNHKホールでは、残念ながら比較にならない。オーストリー放送協会が持っているウィーンでのライブ録音テープからCD化されたら、史上最高の格調を備えたウィンナワルツが聴けるだろうに(出ないだろうね)。

私はこの手の音楽では「皇帝円舞曲」が一番のお気に入り。ウィーンフィル創立150周年記念CD(DG)に収録されている複数の「皇帝円舞曲」の録音、1937年のワルター、50年のフルトヴェングラー、87年のカラヤン、それとは別の61年のクレンペラーとフィルハーモニアOによるスタジオ録音(EMI/WARNER)などを聴き比べても、75年当時のベーム/ウィーンフィルによる演奏は圧倒的である(マイクの前でかしこまってしまう悪い癖が出た71年スタジオ録音のことではない。お間違えなきよう)。

来年のニューイヤーコンサートの指揮者はグスターボ・ドゥダメルとのこと。ラテン系のノリの良さが売りだから、久しぶりに期待できるかも。40年も見ているとオケの団員さんで昔20代の若手だった人が、すっかり白髪頭のおじいちゃんになってるのをリアルタイムで目撃することになる(第1バイオリンのエックハルト・ザイフェルトさんとか)。他人のことは言えないが、歳歳年年 人同じからず・・・


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