弦楽アンサンブル #19

ベートーヴェン弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調弦楽合奏で演奏する6回目。今年最初の練習は1月7日にあったが体調不良でお休みした。しばらく楽器に触れてなかったが、毎月2回の練習を両方休むのもどうかと思い、重い腰をあげて出かけた(2週間前にやらかしたギックリ腰の鈍痛がまだ残っていて動きが渋い)。

本日の練習メニューは後半の第5楽章〜第7楽章。チェロパートは欠席者がかなり多かった。パートトップの先生もお休みで代わりの女性が来ていた。指揮者も風邪で熱があるとかで顔を見せただけで早退。コントラバスを弾いている若い男性(プロ)による代行指揮となった。

指揮者からの注意事項は、難所を過ぎて平易なところになると自然にテンポが早まる傾向があるから、イン・テンポを守るようにとのこと。上り坂はしんどいけど、下り坂になるとスピードが上がる車みたいになるのだ。

最後期のベートーヴェンの音楽は構造が入り組んでいて非常に複雑である。終わりそうで終わらない粘着気質も目一杯出ている。この曲は15番より先に出版されたため14番の番号が付いているが、作曲順では15番目になる。この後、短い16番を書いて作曲者は亡くなった(作曲の順番は15番、13番、14番、16番の順)。演奏時間が40分前後もかかる大曲は14番が最後になるため、ベートーヴェン が到達した最高点とみなす人もいる(シューベルトは「この後でわれわれに何が書けるというのだ?」と激賞したらしい)。そういう曲の演奏は難行苦行の連続となり、ようやく楽譜の終わりが見えてくる頃にはホットし、つい気が抜けて思わぬ箇所で崩れたりする。最後まで気を抜けない音楽だから、そのつもりでお願いしますとのことだった。

プロにとっても厄介なのだから素人には負担が重すぎる。自宅で独りでチェロパートをさらっていると、途中で何が何だかわからなくなるので参る。全体像は複雑過ぎて、とても覚えられない。パート譜はジグゾーパズルの断片を眺めているようで困惑するし。全体合奏で他パートと一緒に弾くと、ようやく自分が何をしているのか理解出来る有り様である。

同じベートーヴェンでも交響曲の場合は、これほど入り組んだ難解な書き方はしてない。もともと4人でやる時ですら骨子を組み上げるだけでも難しいのに、人数を増やせばアンサンブルが崩壊して立ち往生する可能性が高い。普通のアマチュアグループは手を出せない曲だろう。私が所属する楽団は、各パートトップにプロ奏者を常駐させる贅沢な陣容だから演奏可能になっているわけで、素人には分不相応な貴重な体験をさせてもらっていることになる。ベートーヴェンをやりたいというリクエストが会員から上がったので、これを選んだと常任指揮者が説明していたが、よりによって最難関レベルの曲を選んでくるとは。残りの演奏機会はあと3回。2月に2回の練習があり、その後、公開練習でお客さんに聞いてもらってこの曲とはお別れ。ベートーヴェンが到達した世界の何たるかは実感させてもらえたが、合奏を楽しむ余裕は全然ない。

3月から練習する新しい曲、グリーク「2つの悲しい旋律」と「2つのノルウエーの旋律」の楽譜が配布されたのでもらってきた。どのパートも音符の数が少なくてスカスカ。ベートーヴェンの後では気が抜けるほどシンプルに見える。あまりに落差があり過ぎて、ため息が出てしまった。



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