TVが天皇陛下のお言葉を放送

20数年前の9月初旬、当時の勤務先に天皇皇后の行幸啓があり、1時間ほど施設内をご案内をしたことがある。本番の前に下見に来る役人チェックがくどくて、連日の応対に事務方が参っていた。廊下の長さをメジャーで計測して歩行時間を割り出したり、マンホールに封印したり。違う人が来るたびに、同じことを何度もするのだ。分刻み、秒刻みのスケジュールを作って、建物平面図に移動経路を赤線で入れたものを配布。私も1冊もらった。お成りに備え壁は塗り直すし、クロスは張り替えるしで、建物はピカピカ。周辺道路も舗装がきれいに。

両陛下はマニュアルに従い計画通りに動かれていた。おつきの役人(県知事、警察本部長、市長、宮内庁・・・)30名。マスコミの取材30名、合計60名が金魚の糞みたいにくっついて、ぞろぞろと移動。周辺は県警3000人が動員され厳重な警備。はるか後ろの山の中まで警備が入っていた。お迎えする側の関係者ははれ物に触るようなピリピリした気配で、無事に終わるのを待っていた。

室内の片方にひな壇がしつらえられ、両陛下のお姿をマスコミが一斉に写真撮影したりして。他に客がいないのは不自然だからという理由で、桜のご婦人数名が呼ばれて隅の方にいたりとわざとらしい。お二人は慣れていらっしゃるから、平然と施設内を御覧になっておられた。その後、お茶を差し上げる段取りになっていた。ここでもマニュアルがあって何グラムの茶葉を何度のお湯で入れるとか細かく指定。お茶のご相伴にあずかったが、かなりぬるかった。その席で翌月の外国訪問を控えておられた陛下から訪問先に関連する質問があり、その国の文化の伝統(というか特異性)を手短にご説明申し上げた。急所を突いた鋭い質問で、疑問が生じたら納得する説明を求める方とお見受けした。

外では沿道に住民が勢ぞろいして、残暑が厳しい炎天下、1時間以上もお出ましを待っていた。陛下が先に車に乗り込まれたが、車外に立つ皇后さまが袖をつかんで何かお話に。陛下は車から出られて、民衆に手を振られてから再度乗り込まれた。

めでたく予定通りスケジュールは終了。お帰りになられた後、菊のご紋が入ったタバコの小箱をひとつ頂戴した。私の家族は誰も吸わないので、親戚の叔父に進呈したら、恩賜のタバコに感激していた。現在でも、ああいう物々しい行事を一年中こなしておられるのだろう・・・




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