「カリスマ指揮者への道」

ちょっと前にNHK・BSで「カリスマ指揮者への道」というドキュメンタリーを再放送していた。若手指揮者の登竜門とされる第4回ゲオルグショルティ国際指揮者コンクール(フランクフルト、2008年)を取材した番組である。ビデオ審査で応募者540人から24人が本選に招かれ、1次審査(9人)、2次審査(5人)とふるいにかけ、最終選考に残ったのは3人。この年の優勝者は日本人の両親を持つシズオ・Z・クワハラ(桑原鎮男)氏だった。76年に東京で生まれ、10歳で渡米。現在は米国籍という俊英である。

私はミスターZ、クワハラさんに11年前に出会っている。当時都内で活動していたアマオケの「ベートーヴェンチクルス第2弾・桑原鎮男氏芸術監督就任記念演奏会」にエキストラ(Vn1)で参加。晴海の第一生命ホールでベートーヴェン交響曲第5番、ピアノ協奏曲第1番などを弾いた。

クワハラ氏はリハーサルの進め方の段取りがよろしく、非常にわかりやすい指揮をした。アマオケでお目にかかるのは珍しいレベルの有能な指揮者であることは、すぐにわかった。楽曲の解釈に関する話も洞察力の深さが感じられ、ずいぶんと勉強させていただいた。

クワハラ氏がそのオケの定期演奏会を振りに来たのは2006年から2008年までの3年間。交響曲とセットでプログラムに入れていたピアノ協奏曲のソリストと仲良しという事情があったようだ。私もその間、エキストラとして継続参加し、ベートーヴェン交響曲第7番、ブラームス交響曲第2番、モーツアルトのピアノ協奏曲第20番、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番などを弾かせてもらった(コンチェルトの伴奏メニューの中ではとても楽しめた曲目)。3回目の公演があった年にコンクールで優勝されていたとは全然知らなかった。

優秀な若手指揮者が振った演奏会に出られたことは、得難い貴重な体験として忘れられない思い出になっている。かなり昔の演奏会のようなつもりでいたが、TV番組を見た折に記録を調べたら10年前の出来事だった。この10年間に私は仕事が変わり、趣味のヴァイオリンはチェロに転向、オーケストラ活動からも遠ざかって室内楽中心に移行するなど、いろいろと環境が変化。クワハラ氏との演奏会は遠い昔の出来事のような気がしていた。ベートーヴェン交響曲全曲演奏を目的にして設立されたアマオケは、その後も1番から8番までは演奏を続けたものの、第9公演は結局実現せずに解散したようだ。


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