ニューイヤー・コンサート

元日放送のウィーン・フィルニューイヤーコンサート(録画)を視聴した。指揮はリッカルド・ムーティ。前髪が垂れ下がるのが気になるらしく、何度も頭に手をやる。現在76歳。お顔にはだいぶ皺が増えた。1975年だったか、ウィーン・フィルカール・ベームと来日した時、一緒に来て何度かコンサートを指揮していた。43年前だから当時は33歳。活力にあふれたビビッドな音楽をする人という印象を受けた。その後の活躍は知っているし、CDもいろいろ聞いているが、どれもいまひとつでピンと来ない(たぶん私はこの人がやる音楽とは相性が悪いのだろう)。

今年のニューイヤーコンサートは総じてテンポが遅めでソフィストケイトされた円熟の味、老大家の雰囲気が出ていた。しかし何となくオケ側に丸めこまれたような既視感を感じて途中で見るのをやめた。オーケストラも毎年の顔なじみだった古参メンバーがいなくなり世代交代が進んでいる。

口直しに1987年のニューイヤーコンサートカラヤンの指揮)のDVDを取り出した。画質は古くなったものの、会場にただよう華やかなオーラがすごい。まさに役者が違う。カリスマ指揮者と対峙するオケの連中の表情を見ていると、ピリピリしながら弾いている雰囲気が伝わってくる(笑みが見えるのは最後のラデツキー行進曲になってから)。比較的遅めのテンポが採用されているけれど平板にはならず、豪壮華麗な恰幅の良さはさすがである。カラヤンは1940年代のSPレコード時代から度々ヨハン・シュトラウス一族の音楽をレコーディングしている(特にヨーゼフ・シュトラウスのワルツ「うわごと」はお気に入りだった由)。ウィーン・フィルとはEMI(40年代のモノラル)やデッカ(60年のステレオ収録)に録音しているが、晩年に再度ウィーンで演奏記録を残せたのは幸いだった。

皇帝円舞曲」とか「美しき青きドナウ」といった有名曲では踊りの画面が被されているため、カラヤンの指揮姿は拝めない。当時の放送をそのままDVD化するのではなく、舞踊場面をカットしてコンサート会場の記録映像だけで作り直して欲しいと思った。亡くなる2年半ほど前のカラヤンの記録映像は貴重で、顔には出さないが体調はよくなかったはず。伝記本を読むと、晩年は身体がボロボロだったらしい。特注の腰掛で体を支えながら、ゆったりと指揮をする姿を眺めていると、いろいろと考えさせられる。あの時も放送を見ていたが、カラヤンの死期が近づいているとは思いもよらなかった。


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