湘南弦楽合奏団第57回定期演奏会を聞く

今年が創立40周年というアマチュア弦楽合奏団の演奏会を聞いた。会場は鎌倉芸術館。演目は以下の5曲。アンコールではメンデルスゾーンの「春の歌」をやっていた。指揮者は三河正典さん。

モーツアルト モーツァルト ディヴェルティメント ニ長調 K136
エルガー   セレナーデ Op.20
ディーリアス 2つの水彩画
バーバー   弦楽のためのアダージョ Op.11
ブロッホ    合奏協奏曲第1番(ピアノ: 喜多輝美)


第1ヴァイオリン8名、第2ヴァイオリン7名、ビオラ7名、チェロ4名、コントラバス2名。総勢28名の大所帯だから、最初のモーツアルトでは量感はあるが切れが甘く、ディティールが滲んでいるような印象を受けた(昔、K.136のセカンド・ヴァイオリンを担当したことがある。悪夢のような体験だった。その時の指揮者の先生から聞いた話によると、海外ではオケに入ってきた新参の若手にK.136のセカンドパートを弾かせて、ベテランたちがニヤニヤするのだとか)。


             K.136 セカンド・ヴァイオリンのパート譜


続くエルガーでは曲想自体がモワモワしているため、小回りが利かない弱点は目立たず、しっとりと落ち着いた音楽を聞かせていた。ディーリアスとバーバーも同様。最後のブロッホの曲はこの作曲家がアメリカに渡って教えていた音大の学生のために書いたものだそうで、疑似バロックスタイルの4つの楽章を持つ。チェンバロの代わりにピアノを使っていて、時々合いの手をはさむ感じ。最後の第4楽章はフーガ。作曲技術は優秀なのだろうが、出てくる旋律に面白味が足りず、練習曲みたいでそっけない。演奏はこの曲が最も盛り上がっていた。テクニカルな見せ場もしっかりこなしていたものの、客席の反応は初めて聞く曲に対するとまどいもあったような。

現在チェロとコントラバスを募集中とのこと。確かに大勢いるヴァイオリン、ビオラ軍団に比べてチェロ、バスは人数不足。低弦の音量が細いのは惜しかった。指揮者は鷹揚なタイプの方のようで、もっと鋭い音楽を作る指揮者が振ったら、この団体の演奏は激変しそうなポテンシャルを感じた。皆さん上手でそつがなく、きれいに弾いているけれど、音は前にどんどん出てこない。ステージの上で響きが完結している感じ。若手主体の団体だと元気があり過ぎて、ノリノリのズンドコ節みたいになちゃう例を知っている。この合奏団の演奏は老舗らしく端正にまとめるのが身上なのだろう。




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