湘南ジュニア+(プラス)合奏団 第17回定期演奏会を聞く

N響団員が主催するジュニア合奏団(創立は2001年)の演奏会を聞いた。昨年までは小学生〜高校生までの団体だったが、今年から大人も団員として参加、名前も「ジュニア・プラス合奏団」と改名した由。

演目は ヴィヴァルディ「冬」、ハイドン「チェロ協奏曲ハ長調」(ソロはルドヴィート・カンタ)、シチェドリンカルメン組曲

ヴァイオリンは24名、ヴィオラ5名、チェロ9名、コントラバス2名、オーボエ2名、ホルン2名、打楽器3名の陣容。立派な室内管弦楽団である。

ジュニア・アンサンブルは過去に何度か聞き、毎回上手なので感心してきた。中学生だった男の子(「冬」のソロを担当)が、今年は大学生になっていた。最年少は小学2年生(チェロ)。大人はシニア世代が多い。孫とじいちゃん、ばあちゃんが一緒にやっているような雰囲気。

今回の目玉は、昨年度までオーケストラ・アンサンブル金沢で首席チェロ奏者を務めてこられたルドヴィート・カンタさんが独奏するハイドンである。楷書体のがっちりした骨太な演奏を聞かせてくれた。第1楽章のカデンツァは重音が豪快に鳴る現代音楽。カンタさんオリジナルのようだ。第2楽章後半にもカデンツァが入った。今度はジャズっぽいスウィングが加味されていてビックリ。ハイドンとの違和感がすごく、18世紀から21世紀にワープしたような取り合わせだった。雄渾な演奏を繰り広げつつ洒落た遊びも披露する。アンコールはバッハ無伴奏チェロ組曲第2番「サラバンド」。薄墨色の幽玄の境地。

最後のシチェドリン編曲「カルメン組曲」は、1967年に「カルメン」をモチーフにしたバレエを上演する際に、弦楽とパーカッション(今回の演奏はプロ奏者)の組み合わせでビゼーの世界を再構成したもの。管楽器は参加しないが、いろんな打楽器(木琴とかも)がポコポコ・バンバン鳴るので変化に富んで面白かった。途中に何故かアルルの女の「ファランドール」が入っていた。1stVnの難所、後半のハイポジション連続場面はどうかなと注視したが、正確な音程で一糸乱れず、パーフェクトな合奏を見せつけた。昔から音程の精度が高くて、近隣にいくつもある大人のアマチュア管弦楽団よりも上手なのだが、シニアが加わったジュニアプラスでも、その点は大丈夫だった(ヴァイオリンには何人かプロの指導者が混ざっていた)。地元に出来た3番目のアマオケだが、ヴァイオリンに関しては最後発のここが一番かもしれない。音程の良さと前に出てくる発音のパワーが見事。同じ指導者に習っている子供たちはメソードが統一されているし、練習もしっかり。指導者の教え方もうまいのだろう。

問題があるとしたらチェロである。子供は小2と小6の2名、残りの7名は大人。指導者のプロが2名いるものの、5名はアマチュア。数年前に地元アマオケを一斉退団した人たちが横滑りしていた(理由は知らないが、チェロパート内の古参グループがまとまって退団した)。ヴァイオリン群の若手の機敏さに比べると、シニアのチェロはのっそりしていて動きが緩慢。ボーイングは遠慮がち、音量も控えめ、子供のように身体が柔らかく動かないのはしょうがないか。

ホール最後部には親御さんたちがずらりと勢ぞろい。カメラを三脚に乗せて撮影されていた。今日の映像記録は、お子たちが大人になった時に値打ちが出てくるだろう。

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