弦楽合奏#6

毎月2回ある定例練習。7月の1回目に出席した。14時〜16時30分までみっちり。途中10分間の休憩はあったものの、ほとんど弾き通しで疲れてしまった。中高年のグループなのに、皆さんタフだと思う。

【練習メニュー】

基礎練習・・・①音階練習
       ② Mozart 交響曲第17番ト長調 K. 129〜第2楽章
曲の練習・・・①黒い瞳
       ②愛のあいさつ
       ③80日間世界一周
       ④浜辺の歌


基礎練の2番目、モーツアルト交響曲第17番は今回が初めてだった。1772年、16歳のモーツアルトが作曲した曲である。原曲にはオーボエとホルンのパートがあるが、弦楽器と被っているので省略しても演奏可能のようだ。第2楽章はアンダンテの指定があるソナタ形式ハ長調、4分の2拍子。一見弾きやすそうに見えるが、細かいニュアンスを込めて演奏するとなると、なかなか。少年時代のモーツアルトの音楽は、シンプルに書かれた楽譜の行間に音楽が溢れていて、それを演奏者の側で汲み取る必要があるから手ごわい。以前、某アマオケで同じ作曲家の交響曲第26番k.184を演奏した経験がある。17番の翌年、1773年の作曲である。その時も手間をかければ、ちゃんと報われる音楽の陰影の濃さに驚き、17歳の作曲家の天才ぶりに舌を巻いたのだった。こういう曲を基礎練習用に選ぶこのグループのライブラリアン(チェロ奏者)の見識に感心してしまう。

今日の練習は、指導者がピリオド派風の快速テンポで弾き始めたから面食らってしまった。アンダンテというよりアレグレット。速足で歩かないとついてゆけない。十六分音符が並んだ箇所などは大忙し。丁寧な表情を込めて弾く余裕がない。モーツアルトの常というか、セカンド・ヴァイオリンは刻みしかないけれど、単純な刻みにこそニュアンスを込めてもらいたい。速く弾かせるので、セカンドの人達はアタフタして雑な演奏になってくる。破綻寸前では余裕がなさ過ぎるから、次回の練習ではもうちょっと遅く弾かせ錬成してゆくのだろう。

「アンダンテ」のテンポ設定がどうなのか、手元にあるモダン楽器を使用した録音からいくつか選んで聞き比べてみた。17番はマイナーな曲だから、全集録音からピックアップすることになる。

かなり遅くてゆるゆると演奏しているのはハンス・グラーフ指揮ザルツブルク・モーツアルテウム管弦楽団ネビル・マリナー指揮アカデミー室内管弦楽団盤(いずれも全集盤)。音楽が微笑むようなのどかな風情。リズムの切れが甘く、ちょっと野暮ったい印象もある。

 グラーフ

 マリナー

反対に速い方ではアダム・フィッシャー指揮のデンマーク国立室内管弦楽団とか、ジェフリー・テイト指揮イギリス室内管弦楽団盤。いずれもピリオド派の影響を受けて、モダン楽器による演奏としてはかなり速い。鋭角的な演奏を心地よいと思うか、セカセカしていると感じるかは聞き手次第。

 フィッシャー

 テイト


中庸のテンポとしてはチェンバロ通奏低音が入るチャールズ・マッケラス指揮プラハ室内管弦楽団盤が妥当な感じ。見通しのよいスマートな演奏である。マッケラス盤よりも若干遅めのテンポで重量級の音楽を聞かせるカール・ベーム指揮ベルリン・フィル盤は、細部まで目配りが行き届き、あるべきものがあるべき場所に過不足なく収まった印象。構えが大きく若書きの音楽がたいそう立派に聞こえてくる。

 マッケラス

 ベーム

ベームが全集録音を行った時代(1959年〜69年)に比べると、現代のモーツアルト演奏は大幅にスタイルを変えてしまった。とはいえ、目新しさを売り物にしたエキセントリックな作為は、手の内がわかってしまえば陳腐化する。その方面のスターだったアーノンクールが亡くなり、ピリオド派のブームが一段落したところで振り返ると、コケ脅しと無縁な謹厳実直な指揮者のスタイルとベルリン・フィルの美質が結びついたベーム盤は、音楽の構築性の見事さもあって、再評価が高まるのではないかと思う。ピリオド派の痩せた響きとベルリン・フィルの分厚い音の落差は凄いが、モーツアルト本人は大人数オケによる自作演奏を喜んでいたらしいから全然OKだと思う。後発のいろいろな録音と聞き比べてみても、ベーム盤に古臭さは感じられず、王道を行く演奏に思われた。


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