弦楽四重奏団始動 #1

弦楽アンサンブルのメンバー(楽団指導者のヴァイオリン男性とプロのヴィオラ女性)に埼玉県在住の女性(ヴァイオリン)を加えた平日活動の弦楽四重奏団がスタートした。私はチェロ担当。

 

 練習会場は某女子大の名前が付いた公設ホールの地下練習場。かなり広くてゆったり。天井も高いので気持ち良い空間だったが、音響はデッドでまったく響かない。13時から15時半ぐらいまでモーツアルト弦楽四重奏曲第4番 K.157 ハ長調」を練習した。ミラノ四重奏曲と呼ばれるシリーズの第3曲で、16歳のモーツアルトの作曲という。

 

 急・緩・急(ロンド)という三楽章構成。第1楽章は二つのヴァイオリンが前打音付の下行分散和音のモティーフをカノンで奏し、次いで付点付トリルのモティーフが上三声のカノンで扱われ、細かな音を紡いでゆく。横で聞いていると、セカンドさん、お疲れ様ですといいたくなる・・・(昔、ディベルティメントK.136で懲りた経験から、モーツアルトのセカンド・ヴァイオリンは悪夢という偏見を持っている)。第2楽章はヴァイオリンが悲歌風の第1主題を鳴き節で弾き始め、それを受けてチェロがロマネスカ・バスという舞曲形式でそっと寄り添ってゆく。途中でチェロに嫌らしい分散和音が出てきて冷や汗をかく。第3楽章プレストは活発なシンコペーションによる舞曲風主題が四現するロンド・フィナーレ。

 

シンプルな構成とはいえ、なかなかよく出来ているのはさすがである。今日は初回の顔合わせだったので、テンポは遅めにして弾いたけれど、全楽章がさらっと通ってしまった。ファーストヴァイオリンの男性は弦楽アンサンブルでも細かい指示を出されている方だが、ここでもかなり突っ込んだ細かい指導を(主に難所であるセカンドに)されていた。音楽的な意味とは何かを考えるためには、とても良い教材だと思う。

 

 セカンドとチェロは弦楽四重奏を本格的に演奏するのは今回が初めて。私は学生時代にぶっつけ本番初見大会でヴァイオリンを弾いて遊んだ経験はあるが、細部の修正を積み重ねながら練習したことはない。弦楽四重奏のチェロは音量をかなりセーブしないと他の楽器のお邪魔になると思い、つとめて柔らかい音色で控えめに弾いた。部屋の壁が吸音ボード仕様のため、壁からの反響音が聞こえない。音がどんどん吸い込まれて消えてしまい、弾いている当人の耳元では「ふわ~」と鳴っているだけに聞こえるから心配になる。音量に不足がないかどうか聞いたら、ちゃんと音が前に出ていて十分といわれてほっとした。 

 

チェロパートは音符が少なくて助かるが、それでも今日は自分の事で手一杯。他パートの仕事内容までチェックする余裕はなかったため、拍の頭をチェロだけが打つ場面でアタックが弱いと注意された。パート譜だけを見ていると、チェロが単独で弾く場面かどうかがわからないから、事前勉強の不備である。アタックと言ってもほんのわずかなメリハリを付ける程度。ものをいう時には、はっきり、くっきりとしゃべり始める必要がある。演奏もそれと同じ。滑舌が悪いアナウンサーみたいになってはイケナイ。そういう要注意箇所を拾い出して、楽譜にチェック記号を記入したら結構な数になった。ポイントは「音の出だしはきっぱりと、音のしっぽは十分に伸ばす」。

 

ヴィオラのお姉さんと時々ユニゾンで同じ旋律を弾くことがあったけれど、音色がぴたりと一致するとかなり気持ちよかった。彼女は演歌調とまではいえないけれど、担当するフレーズをたっぷりと歌い込むのがお好きなよう。最初、私のチェロがサクサクと前に進んでしまうので、存分に歌えないとご不満の様子。リクエストを受けてからは、語尾を伸ばし気味にして、最後までひっぱる朗々歌唱スタイルに合わせて調整したらOKをいただいた。今日のモーツアルト演奏は、あまり粘らないでさらっと流したり、鋭角的な刺激を加えたりでいろいろだが、こってり濃厚な味付けも悪くない。その辺は趣味の問題だから、要望を出してもらえば対応できる。

 

私の課題は第2楽章に出てくる十六分音符5つがワンセットになった分散和音の連続箇所をスムーズに、なおかつ粒立ちのよい音でなめらかに弾くことである。嘆息調の音の流れの中で、チェロがブツブツと独り言をつぶやくみたいなイメージの場面である。練習曲みたいなスラーでつながった5つの音は途中で移弦も入るため弾きにくく、思わず身構えてしまう。次に来る5つワンセットが気になって、ひとつ前のグループの最後の音を少し端折ってしまったようだ。急がなくて大丈夫との指摘を受けたけれど、今のところは音程を取るだけで忙しく、ボーイングをどうこう工夫する余裕がない。とりあえずスラーを外して大きな音で練習してみようと思う。

 

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今後の練習は2月26日と3月29日の2回。4月6日に人前で披露する予定になっている。モーツアルトの次はハイドン弦楽四重奏曲をやるらしい。弦楽四重奏は各パート1名のアンサンブルだから誤魔化しは効かない。シビアな事前練習が要求されるし、それをしてこないと居場所がない。どういう姿勢で音楽に接し、楽しむかは人それぞれだろうが、レイトの集まりにありがちな微温湯につかるような甘えがないグループの方が後味がすっきりしていいように思われた。

 
 

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