弦楽四重奏の次の曲はハイドンの「五度」

1月から始まった平日に活動するカルテットは、現在モーツアルトの若書きの弦楽四重奏曲第4番を練習している。4月6日に公開演奏をする予定で、5月から練習する曲としてハイドン弦楽四重奏曲76番「五度」(Op76-2)を提案したら、他の3名が賛同してくれて「五度」に決まった。

https://www.youtube.com/watch?v=9mvEQ7QQGIA

 

ハイドン後期の名作「エルデーディ四重奏曲」6曲セットに含まれる曲である。「五度」は連作中の2番目にあたる。3番目には有名な「皇帝」が、4番目には「日の出」、5番目には「ラルゴ」なんて曲も含まれている。エルデーディ伯爵に献呈されたのでこの名があるそうだ。作曲は1797年。2度にわたるイギリス旅行からウィーンに帰って最初に書かれた主要作品とのこと。当時ハイドンは64歳。円熟期の名作だから演奏機会も多い。「五度」は第1楽章冒頭に出てくる五度下降動機からこのあだ名がついている。チェロパートはそれほどややこしくないが、ヴァイオリンは負担が大変だと思う。平日カルテットのファーストさんはセミプロ級の腕前だし、ヴィオラはプロの方だから心強い。

 

手元にあるCDを調べたら11種類あった。ハイドン弦楽四重奏曲全集CDは3種類持っている(エンジェルス四重奏団、コダーイ四重奏団、ブフベルガー四重奏団)。どれも21枚から23枚の分量があるから全部は聞いてない。この中では旧Philips(現在はデッカから発売)のエンジェルス盤が好印象だった。アメリカのカリフォルニアあたりが本拠地らしく、今風のスマートなスタイルでそつがない。教会でセッション録音しているため残響が長く、4人の音がまとまって聞こえるため分離はよくないけれど音の鮮度はいい。この四重奏団の他の録音はあるのだろうか?活動の詳細は不明である。

 

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ナクソスから出ているコダーイ四重奏団のCDも教科書的な模範的演奏で参考になる。ハンガリーの団体が楷書体の折り目正しい演奏を聞かせる。ブリリアントから出ているブフベルガー四重奏団はドイツの団体らしい。角ばった芯の強い音楽をする。第4楽章でファーストが大胆なグリッサンドを聞かせるのでビックリする。旺盛な表現意欲は面白いけれど、ちょっとくどいところもあるから、繰り返し聞くと飽きてくるかも。

 

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単発で出ているCDの中ではウェルナー・ヒンクなどのウィーン・フィルのメンバーによるウィーン四重奏団盤(カメラータ)がよい出来だった。エレガントで上品な鮮やかさが魅力的。

 

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モザイク四重奏団盤(アストレ)はピリオド派の演奏といっていいのだろう。ヴィブラートを抑制した硬派の音で攻めてくる。ゴリゴリした古漬けのタクアンみたいな感触があって、アクの強さが目立つ。DGから出ているアマデウス四重奏団の演奏、今となっては構えたような仰々しいところがある古いスタイルで、合奏精度も緩いところがある。残響が殆どない録音は生々しいけれど、きつく聞こえる。

 

東京クアルテット(全員が日本人だったころの録音)は切迫感のある気迫がこもった演奏を披露していいる。それが青いというか余裕が足りないというか、若い感じにも聞こえるのだが。リンゼイ四重奏団は小気味よい鮮やかさが粋だし、タートライ四重奏団(ハンガリーの団体、ハイドン弦楽四重奏曲全集録音を完成している)は、スローテンポでのんびりと弾いている。フィルハーモニア・クアルテット・ベルリンは、ベルリンフィルのメンバーによる演奏で、手堅い堅実さに好感を持つが、ちょっとくすんだ録音でもあり、今一つ決め手に欠ける。クイケン四重奏団はピリオド派らしくピッチが低いし弾き方も随分と違う・・・と、いろいろ聞いてみたが、エンジェルス、コダーイ、ウィーンの3団体の録音があれば私には十分だと思った。

 

「五度」は繰り返し指定が多いので、全部繰り返すと演奏時間がかなり長くなる。第3楽章メヌエットには「魔女」のあだ名があるという。主部はカノンで、2本のバイオリンのオクターブ、ビオラ・チェロのオクターブの実質2声で奏される。おどろおどろしい劇的な雰囲気が面白い。こういう曲はアンサンブルの精度を高める練習が出来るので勉強になるだろう。弦楽合奏団とかオーケストラもそれなりに面白いが、各パート1名の弦楽四重奏は緊張感が違う。もっと早く始めればよかったと思っている。

 

 

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