元農林水産事務次官が長男を殺害した事件

76歳の父親に殺害された息子さん(44)は20歳の時に統合失調症(妄想型)を発症していたそうだ。

https://twitter.com/InsideCHIKIRIN/status/1135488520347238400

 昨年1月の段階では「薬で普通」と書いてあるので、薬物療法寛解(ほとんど病前の状態に戻って安定する)になっていたのだろう。引きこもりでゲーム三昧の日々を送ったのは、この病気の陰性症状のためと考えられる。微妙な平衡を保っていた精神状態が、最近何らかの原因で急激に悪化したのだろう。ゴミ出しのトラブルで近所ともめて、事件の10日前に実家に戻ったのはそんな背景からと推察される。殺害されるまでの10日間はかなり危うい精神状態となり、本当に殺人事件を起こしかねない寸前に見えたのかもしれない。運動会中の児童らを「ぶっ殺す」と発言し口論になったそうだが、川崎事件の直後でもあり、実行するのではと父親が危機感を抱いたとしてもおかしくない。44歳の壮年男子が狂って暴れだしたら76歳の老人が対抗して抑え込むのは難しい。「周囲に迷惑をかけてはいけない」と考え犯行に及んだそうだが、統合失調症の怖さを知る人には、その言葉はリアリティを持って伝わってくる。とはいえ措置入院させるために警察なり保健所なりに通報するいとまもなかったほどに、息子さんの症状が激変したのだろうか。

 

 専門家によれば、この病気が悪化した患者を素人が家庭で看病するのは無理だそうだ。家庭崩壊するので措置入院で檻の中に閉じ込めるしかないという。昔の座敷牢である。今回は被害者の病変が急で暴れるなどして親は手が付けられなかったのかもしれない。以前、知り合いにこの病気の人がいて家族が持て余し困ったことになり、私が面識のある東大の先生(メンタルケアが専門)に相談し、病人を抱えてトラブっている知人と一緒にお話を伺ったことがあった。この病気の人は珍しくなく、ちょくちょくレクチャーの依頼があるとかでパンフレットが用意されていた。20歳前後に発症するケースが多く、その頃は「天然ちゃん」とか呼ばれて、ちょっと変わったマイペースの子と見られる場合が多いそうだ。その後、薬物治療(薬剤のチョイス、分量計算など、患者の状態に合わせた精密な調合が求められるため、どこの病院でもOKとはいかないとのこと)が上手くゆけば安定し寛解の状態になるが、加齢によってふたたび悪くなる場合があるらしい。当人にとっても周囲にとっても酷な病気と聞いた。親が子供を包丁で刺し殺すとは痛ましい限りだが、統合失調症が引き起こした事件とわかると、被害者も加害者もお気の毒に思われる。子供の育て方が悪かったとか、そういうレベルの問題ではない。

 

 

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