チェロ・アンサンブル#88

10月最初のO先生のレッスンがあり、5名全員がそろった。前回からスタートしたオッフェンバックの2重奏曲(作品49)の第2番をさらった。アレグロとアレグレットの2楽章からなる曲で、2曲目は繰り返しが多くワンパターンの雰囲気もある。飽きずに弾き通すには工夫が必要とO先生がおっしゃっていた。いつものように生徒同士が一対一で合わせたが、2時間のレッスン時間が余ってしまったため、最後にO先生と一対一で合わせる練習をやった。

 

今日はメンバーの女性が持ってきたチェロの激変ぶりに一同が驚いてしまった。彼女の楽器はかつて私が所有していたもので、どういう音が出るのかは熟知している。ノーブランドの100年ほど前のドイツ製量産楽器である。いくらかくすんだところのある暗めの柔らかい音質が持ち味のチェロだった。今年の春、バスバーに沿って表板に細いクラックが入っているのを私が気付き、行きつけの工房で診察、即入院となった(所有者の女性はクラックが重症だとは思っていなかった)。修理期間は予想以上に長引き、5月から10月まで5か月もかかった。

 

数日前に仕上がって戻ってきたのを弾かせてもらったところ、同じ楽器とは思えないほどに変わっていた。修理前の穏やかでちょっとルーズな緩い雰囲気の発音がすっかり影を潜め、つややかで丸みのある粒立ちのいい音がどんどん前に出てくる。新作楽器の元気のいい鳴りっぷりの良さと、100年ほど経過した楽器ならではのこなれた音質がミックスされたような印象。

 

表板をはがして内部を徹底的に修理し、ペグホールを埋めて穴を再度開けるブッシングも行い、ペグも黒檀からローズウッドに交換したそうだ。クラックの手当てやニスの修理も万全で外見もピカピカ。以前の緩い発音はバスバーの膠が緩んでいた結果だったらしく、その辺をきっちり再接着した結果、音に締まりが出てきたし、4本の弦のバランスも良好となり、以前のようなA線のみが鳴り過ぎる悪癖が解消されていた。

 

修理代はかなりの金額になったが、発音が見違えるほどよくなったから所有者は大満足の様子。腕のいい職人が行う修理と調整で、それまで隠れていた楽器の潜在的能力が引きだされたということだろう。過去にも同じ職人に調整を依頼してきた楽器だが、板割れが原因で大修理をした結果とはいえ、変貌ぶりに驚いた。

 

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