ミツバチのお世話になっております

チェロのネックには黒檀の指板が貼り付けてあるが、裏側は円柱状の竿みたいな形状で表面にはニスが塗ってある。といっても表板や横板に塗るような濃い色ではなく、透明な塗装が薄くかけてある。しかしニスはニス。光沢面はちょっとベタつくというのか、サラッとは滑ってゆかない。親指と人差し指の間でネックを挟む格好となって、ポジション移動を素早く大きくやらないといけない時、ネック裏のニスの抵抗が気になることがある。

ところが楽器によっては、ネックの裏側がサラサラで弾きやすいものがある。手の移動時にひっかかりがなくて具合がいいのである。どういう処理をしているのかわからないが、メインの楽器に同じ処理を施してもらえないかと弦楽器店に問い合わせた。電話に出たご主人は「・・・?」チンプンカンプンの様子。どういう状態が私にとって好ましいのか、サラサラとかつるつるとかの程度を電話で話しても要領を得ない。仕方ないので、チェロ2本を持って弦楽器店に行ってきた。

見てもらった結果、サラサラ状態のネックにはほとんどニスが塗ってないらしい。工房からガラスの小瓶に入ったワックスのようなものを持ってきて、布にそれを少し付けて塗り始めた。白木に近い状態だと汗や水分が染みこんで不具合が生じるおそれがあるため。ワックスを塗ってから、乾いたタオルでゴシゴシと拭きあげて作業は完了。ワックスを塗る前よりも木肌の感触はより一層滑らかに、サラサラになっていた。

ワックスの正体は〈蜜蝋〉だった。

楽器用の蜜蝋WAXの商品説明によれば、蜜蝋の主成分はセロチン酸とパルミチン酸ミリシルで、花粉、樹脂などが含まれているらしい。さらに天然の抗菌物質プロポリスやローヤルゼリーが含まれているとも。高い抗菌効果で蜜蝋は半永久的に変質しないのだそうで、効能は以下のようなものらしい。
★カビの防止
★木の腐食 割れ防止
★防水効果 撥水効果
★光沢効果

塗布面がサラサラになる効能は書いてないが、蜜蝋を塗って磨き上げると確かにそういう状態になるのである。イタリアンのネックには透明な飴色のニスが厚目に塗ってあった。かなりベトッとした感触で滑らない状態。しかもネックに使っている楓材の密度がかなり高いそうで、それも抵抗感を増す原因なんだという。アルコールか何かでニスの塗装を少し落として蜜蝋ワックスを塗りこんでもらった。結果はいい感じで、ベタつきが減ってサラッとした触り心地になった。チェロでミツバチのお世話になるとは思ってもみなかった。




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