焼き物の話

若手陶芸作家の個展会場でご当人から話を聞いた。

掌に乗る小ぶりな志野焼抹茶茶碗、1個、20万円。
華やかな貫入釉で仕上げた40cmクラスの花瓶も、20万円。
えらくサイズが違うのに、なぜ、値段は同じなのか?
 
その理由:志野は薪で焚く穴窯で5日間かけて焼成する。薪代だけでも100万もかかっている。火が入っている5日間、作家は不眠不休で窯に張り付き薪をくべている。温度調整が微妙なため、気が抜けないという。

少し時間が出来て横になっても、脳が興奮状態で寝られないと言っていた。5日間の徹夜とは…どういう状態になるのか、私には想像がつかない(相当なハイになっているらしい)。そんな苦労をしても、焼成に失敗する作品が続出し売り物になるのは少数。で、結果的に単価が上昇してくる。ちなみに、茶碗を小ぶりに作るのは、お茶をやる女性の手のサイズを考慮してとのこと。

一方、貫入を釉薬調合により重層的に入れ、薔薇の花びらのように発色させた青磁(薔薇貫入と呼ぶ)は、電気釜で2日焼けば出来ちゃうのだそうだ。作家は窯のスイッチを押すだけ。後は機械制御で温度が調整され、自動的に焼き上がる。なので大きい作品でも、単価は安めに設定できる。そんな話を聞いたら、かわいい志野焼の茶碗が違って見えてきた。


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