変則巻き

張り替えたばかりの弦がなじんで、本来の音を出すまでには最低10日はかかると言う人がいる。行きつけの弦楽器工房の主人からは、落ち着いてくるのは2週間後と聞いている。私の楽器は交換してからまだ5日ほど。もう少し時間がかかりそうだが、プラットナーは、当初の甲高い響きが徐々に減少しており、スピロコアらしい渋味の勝った落ち着いた音が出てきた。

4本ともヤーガーにしたジャーマンチェロの方は、柔らかい音色はいいとしても、穏やかというのか寝ぼけ気味というのか、いまひとつシャキッとしない。そこでカザルス巻きにしてみた。下2本の弦を巻きつけるペグを入れ替える方法である。上ナットからペグまでの距離が短くなると、弦の鳴り方に迫力が増すようで、G線がしっかりしてきた。

ジャーマンは、もともとA線が鳴りやすく、相対的にD線は引っ込んで聞こえる特性を持っている。工房の主人に改善策を聞いたところ、現在装着しているベルギー駒は、高音が響きやすいので、より重厚な音が出るフレンチ駒に作り変えるのがいいかもという話だった。しかし、ベルギー駒の寿命はまだ残っているから、すぐに替える必要はないとも。

ならば、上2本もカザルス巻き風に、通常とは逆のペグに巻きつけたらどうなるだろう?上ナットからペグまでの距離が3分の1ほど短縮したD線は、明らかに強い鳴り方に変化した。一方、ペグまでの距離が3倍遠くなったA線は若干おとなしくなった。4弦とも普通の位置とは異なるペグに巻き付ける変則技である。内側の2本の弦が上ナットに近い位置にあるペグに巻きつき、外側のC線とA線はより遠い渦巻き側のペグに巻きついている。その結果として、C線、A線はややソフトな鳴り方、G線とD線はややハードな鳴り方になった。

外した弦を再度違うペグに巻いてから調律する際に、C線のピッチを上げるつもりで、うっかりG線をどんどん巻いてしまった。慣れとは怖いもので、回すべきペグを間違えた。A線だったら切れたかもしれない。この方法は要注意。


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