残響たっぷりの場所でチェロを弾いてみた

私が住んでいるマンションは400世帯以上の住民が住んでいる。敷地内には住宅棟が3棟と管理人室や集会場がある2階建の共用棟の合計4棟が建っている。

共用棟のロビーは2階までの吹き抜けになっていて、壁も床もコンクリートだから、残響がかなり長い空間になっている。3秒近くあるような気がする。

今日の午後、住民有志8名ほどが共用棟に集まって、雑談する会をやった。普段、住民同士が交流する機会がほとんどないから、かつて一緒に自治会役員をした人たちが集まった。 ロビーの脇に椅子やテーブルが置いてある。そこでお茶を飲みながらの世間話を2時間ほど。

住宅棟から離れて建つ共用棟は、普段は人の気配がない場所でガラ〜ンとしている。ここのロビーの残響がいい感じなのは以前から知っていたが、勝手にチェロを弾くわけにもいかない。

しかし、今日は内輪の茶話会ということで、みなさんにチェロ演奏を披露してみることにした。バッハの無伴奏チェロ組曲第1番のメヌエットとか、いままで個人レッスンで習った曲を5曲ほど弾いた。

西洋の教会のような残響が非常に長い場所で弾くのは初めての経験だった。私のチェロは、少々ハードな設定で、かっちりと締まった音が前に出る調整をしてある。ところが、ここでは弾くそばから、音がまろやかにブレンドされ、ホワ〜ンっとした柔らかい響きになって空間に広がっていった。 固ゆで卵のはずが、温泉卵になったような感じというか、締め上げてあるはずのチェロが、解きほぐされて、ふわ〜と、たゆとうような音色で鳴り出した。オールド楽器の音とは、本来、こうだったのを思い出す。

音量を出そうとして、力を入れて弾く必要はなかった。そっと楽器を響かせてやるだけで十分。楽音の反響はそれほど弱まらずに戻ってきて、次の音と混ざって、また反響を繰り返す。フレーズの終わりでも音が途切れずに響いている感じなのだ。楽器を鳴らすのではなく、響かせる重要性を再認識した。コンサート専用ホールでも、こんなに響くところはめったにないから、かなりの特殊ケースだが、いい経験をさせてもらった。

次回の茶話会は一ヶ月後。またチェロを聴きたいというリクエストがあった。こんどはクラシック曲ばかりではなく、小学唱歌とか歌謡曲とか、年配の住民の皆さんが知っていそうな曲を準備してみようと思う。




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