シューベルトの「死と乙女」

地元の小ホール(100席程度のこじんまりしたサロン)で時々開催される室内楽演奏会があった。今回は弦楽四重奏

演目はモーツアルトの「弦楽四重奏曲第14番」、ブリッジ「弦楽四重奏のための3つの牧歌」、シューベルト弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」。

演奏者は、2005年に地元在住のプロ奏者によって結成された○△●弦楽四重奏団。ここのチェロはグループレッスンでお世話になっているS先生。第1バイオリンは、同じく地元アマオケコンマスをやってくださっている方。ドイツのフライブルクで勉強され、そのまま向こうのオケ奏者になり、さらに別の都市のオケでコンマスをやられて帰国された。今回のプログラムは、2014年にちなんで14番を2曲入れたのだそうだ。

モーツアルトは「春」の愛称があるハイドン・セットの中の1曲。終楽章にフーガとブッファ的旋律が交互に出てきて面白かった。壮麗なフーガが始まったと思ったら、いきなり喜劇的なメロディに切り替わる。モーツアルトによくある前触れもなく唐突に音楽がころっと変わる趣向である。

2曲めのブリッジ(1879〜1941)はイギリスの作曲家。ブリテンの師匠だそうだ。今日演奏した曲には調性があったが、無調音楽も書いているという。「3つの牧歌」というだけあって、どんよりと雲が垂れこめた空の下で見る田園風景みたいな曲だった。スカッと吹っ切れないところは、いかにもイギリス音楽。

3曲目のシューベルトは、長い曲なので途中で寝るかもしれないと予想していたが、とんでもなくハイテンションでスリリングな出来。寝てる場合じゃなかった。気合十分で開始された曲の冒頭で、ベートーヴェンの「運命」のモチーフを思い出す。ああ!そうだったのかと。きれいなメロディの下に隠されたシューベルトの音楽に潜む魔性がぐわっと出現した感じ。終楽章の最後の盛り上がりときたら、アンサンブルが崩壊しそうな快速スピードでビックリ。瀬戸際で踏ん張っているプロ根性を見せてもらった。終わった途端、4名の奏者が思わずふぅ〜っとため息をついて、互いの顔を見ながらホッとする表情を浮かべた。ライブならではの高揚感が素晴らしい。

同じ会場では過去に何度も室内楽を聴いている。今までの演奏会では、安全運転で穏健に仕上げるプロの方々が多かったのだが、今回の出演者は全力投球の釈迦力演奏をやって下さった。プロが本気を出すと凄いぞという内容。聴衆は100名にも満たない小人数。それがもったいない出来だった。





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