弦楽アンサンブル #12

テレマンビオラ協奏曲の1回目。開始前の指揮者のレクチャーによると、テレマンは貴族階級や裕福な市民向けの音楽活動をした人物だったため、生前の人気は非常に高かったそうだ。同時代のバッハは教会を中心に活動したこともあり、大スターのテレマンに比べると地味でパッとしない存在だったという。

しかし、今日の評価は完全に逆転。何千曲もの作曲をしたテレマンの音楽で現在でも演奏されるのは極めて少数。指揮者の先生によれば数曲程度しかないとか。このビオラ協奏曲は、そんな数少ないコンサートレパートリーになっている名曲とのこと(著名なビオラ協奏曲そのものが、ほとんど無いに等しいから、テレマンの曲が目立つような気もする)。

テレマンの音楽は平易に書かれているから、アマチュアでも気楽に楽しめるメリットがある。初見でも弾けるほどシンプルなので助かる。生前のテレマンも、そういう需要に応えて多くの曲を残したのだろう。バッハのような理詰めの構造性が目立つわけではない。平板というか、ゆる〜い音楽だが、誰でも親しめ、それなりに満足させる品の良さを備えている。昔、ヴィヴァルディの音楽が持つ衒学的な匠気を嫌った皆川達夫先生が、テレマンの方がずっといいと褒めていたのを思い出す。ヴィヴァルディの才気走った能弁さの代わりに、テレマンには大人(たいじん)の風格と鷹揚さがある。

ビオラのソロはプロの先生が担当していた。音量の豊かさ、音色の深み、いずれも申し分ない出来だった。ビオラってこんなに豊かな表現力を持っているのかと感心しながら聞いていた。アマオケビオラを弾いている人はヴァイオリンからビオラに転向したパターンが多く、貧相な音、鈍重な調子で弾いていることが多い。私も学生オケでしばらくビオラを弾いていた時期がある。ヴァイオリンに比べると小回りは効かないし、大きくて重たいから肩が凝って大変だった。そういう楽器なので、身近なところでビオラの流麗な音を聞いた記憶は殆どなかった。

しかし、プロの演奏で聞くと、ビロードのようなしっとり感、豊かな低音の魅力、チェロよりも小粋というか機動力に優れる点など、なかなかに素晴らしく思われた。テレマンの協奏曲も滋味あふれる曲想がビオラに向いていて、しんみりした情緒がある音楽だと思った。

Telemann Viola Concerto in G major, Rose Armbrust Griffin - YouTube]


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