「カラヴァッジョ展」を見る

上野の西洋美術館で「カラヴァッジョ展」のレセプションがあったので出かけた。バロック絵画の巨匠カラヴァッジョの現存作品は60点ぐらいらしい。所蔵先を紹介するパネルを見たが、ヨーロッパとアメリカに集中していた。

今回の展覧会には貴重な作品が10点も来ているそうだ。移動不可の作品もある。10点借り集めるのは大変だったろう。とはいえ「カラヴァッジョ展」を名乗る展覧会の中身がわずか10点でいいの?とも思ってしまう。主催者は日本最多、世界有数と自画自賛してるが。10点だけでは会場は埋まらないから、同時代の類似作品を集めて隙間を埋めている。というか他作家の作品数の方が多い。それって羊頭狗肉とか野暮なことを言ってはイケナイ。

カラヴァッジョは明暗の対比を強調したドラマチックな表現で、ルネサンスの平明晴朗な美の世界をひっくり返す時代感情をカンバスに刻みつけていった天才。マニエリスムの喪失感が先鋭化して開き直ったような強さがある。実生活でも破天荒なところがあった人だが、彼のスタイルは多くの追随者を発生させた。そんな外面的パターンだけを模倣した、どれもこれも似たようなB級品のオンパレードを見せられるのは辛いものがある。だんだん飽きてくるから、たまにお目にかかる肝心のカラヴァッジョ作品もその他大勢に囲まれて埋もれ気味。有り難みが弱くなっているのは、展示構成に難があるためかもしれない。とはいえ、形骸化して骨と皮だけみたいになった、つまり空疎感のあるエピゴーネン集団の中に紛れている真作を見つける面白みはある。あれかな?と近寄ってキャプションを見ると、そうだったり。オリジナルには内的必然性があってちょっと官能的。皮の下に肉があり血が通っているように見える。

バッカス」という男芸者みたいな妙に中性的なモデルを描いた絵とか「エマオのキリスト」が展覧会の目玉のようだ。世界初公開と宣伝している「法悦のマグダラのマリア」は青ざめたような冷たい形式美を持ち、今回は来てない「聖マタイの召命」のように霊感が突出した作品とはいえない印象。会場の最後の方には首切り、頭部切断の情景を描いた作品がまとめて展示してあった。生々しいリアル表現を身上にするスタイルで描かれた凄惨な場面もある。血を見るのが苦手な人はご用心。観客の後味を悪くするような怖い作品群をわざわざ出口付近に置いた意図はよくわからない。作者の破滅型人生を打首図でそれとなく暗示したかったとか?

今の時期、都美では「ボッティチェリ展」、江戸博は「レオナルド展」を開催している。イタリア・ルネサンスバロックの巨匠の展覧会が揃うとは「イタリア年」らしくて豪勢。




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