弦楽アンサンブル #22

3月から5月までの3ヶ月は、グリーク「2つの悲しい旋律」op.34と「2つのノルウエーの旋律」op.53の4曲をまとめてやる。今日はその1回目で「2つの悲しい旋律」をやった。前回までのベートーヴェン晩年の弦楽四重奏曲第14番と比べると随分と平易な楽譜で助かる。ここの弦楽アンサンブルは3ヶ月ごとに曲が入れ替わる。テレビ局みたいに1クールが3ヶ月あり、年間4クールをやるわけで、私は1クールごとに楽器を持ち替えて参加している。前回はチェロを弾いたので今回は指揮者、チェロの先生、ヴァイオリンの先生にご挨拶してファースト・ヴァイオリンで参加することにした。2クール前のエルガーの弦楽セレナーデでもヴァイオリンを弾いたが、昨年秋にはいらっしゃらなかったおじさん2名に会った。メンバーの新規加入が結構あるようだ。

グリーク「2つの悲しい旋律」は技術的には容易で初見で弾けるため、皆さんスムーズに演奏されていた。ディヴィジの部分は私はオクターブ低い方を担当することにした。ファーストの皆さんは派手な高音域を弾きたがる人が多いけど、中音域の肉付けをする下のパートの方が私は好きである。この曲は息の長いテヌートとかジリジリと音量を上げてゆくクレシェンドを要求される場面が多く、そうした場面では低音寄りのパートの方が美味しい。

ピアニッシモでは指揮者がいつものようにトランクイッロ(ノンビブラートで弾いて表情を抑制する)を要求していた。北欧風のクールな響きが欲しいのだろう。棒の振り方の講釈もあって、横振り、縦振りの意味の違いとか、中学校の音楽の教科書に出ているような拍子を取るだけの棒の振り方は最悪で役立たずとか、そんなお話。棒の動かし方で音楽の表情を変えるポイントを奏者に伝えるわけだから、メトロノームの振り子みたいな機械的な動きでは意味はないとのことだった。

弦楽アンサンブルの前に、同じホールで練習をやっている管弦楽団(主催者が同じで、双方に参加しているメンバーも多少いる)では、ブラームスのヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲に取り組んでいる。今日はソロが入る1回目だったので早めに会場に行って先生方による独奏を拝聴した。何年か前に大学のOBオケでこれをやったことがあった。ソロは東フィル・コンマスの三浦氏とN響の藤森さんが弾いていた。当時、まだチェロとは縁がなかった私はヴァイオリン(1st)で参加し、練習場での数回と本番でご両人のパワフルな演奏を間近で聞いた。

ブラームスの第5交響曲になる予定だった曲がヨアヒムのご機嫌を取るために2重協奏曲に変更されたとかで、オケ・パートもしっかりシンフォニックに作曲されている。弦も管も難しいが、老年(といってもまだ54歳)のブラームスが枯れるどころか、結構艶っぽいところがある音楽を書いているのが、オケの中で弾いているとよくわかって面白かった。あの時の演奏会の指揮をした小野田さんは、練習会場でヴォルテージを上げて、アンサンブルの精度が悪い木管のメンバーを、強烈に叱咤激励していたのを昨日のことのように思い出す。相手がアマチュアでも手加減せず本気で指導していた。

ブラームスの二重協奏曲はヴァイオリニストもチェリストも主役になれなくて中途半端なためか、あまり演奏されないのは残念。ヴァイオリニストは何かと忙しい割に華やかさとか綺麗なメロディがないから報われない。どうせならチェロ協奏曲に仕立ててくれていたら、低音たっぷりの渋〜い協奏曲になってチェロ弾きが喜んだだろうにと思う(交響曲第5番になっていたらさらに良かったけど)。



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