六本木の国立新美術館でミュシャ展を見る

レセプションに行ってきた。内覧会の開始は16時30分からだったので16時50分に行ったら、2階の会場に上がるエスカレーターの前に長蛇の列。10分ほど1階端にある休憩コーナーで時間をつぶしてから2階に上がったらまだ展示室の入り口で行列している。ふと1階の喫茶室近辺を見るとワインのサービスが始まったから、そちらに先に寄って時間をつぶすことに。

オードブルがいろいろ並んでいるが、どなたも手を出さずスマホで写真を撮ってばかり。そばでチェコ交響楽団のメンバーによる室内楽演奏をしているためもあって、皆さん様子見で飲食が始まらない。ではではと私が一番乗りさせてもらった。牛ヒレステーキの角切りの串刺しとかをつまんで頂戴したら、他の客も一斉に手を出し始めた。スパークリングワインを3杯飲んでほろ酔い気分になってから2階の展示室に移動。ちょうど室内が空き始めていて、いい感じだった。

噂に聞いていたミュシャ晩年の超大作「スラブ叙事詩」20作品は、チェコ以外では初公開という。50歳でチェコにもどって17年の歳月をかけて完成された作品群は、1枚の絵がおおよそ6m×8mぐらいのサイズ。そんな大作がまとめて日本に来るとは予想もしてなかった。普段は無駄に巨大と思う国立新美術館の展示室だが、今回ばかりはドンピシャで高い天井が有効に活用されていた。

20畳〜30畳相当とかそんな感じの作品がぞろぞろ並んでいる。そのままでは飛行機に乗らないから、額から外して巻いて持ってきたのだろうが、よくぞ日本にお出ましくだされた。私は美術館という場所に通い始めて40年以上になるが、こんな展示を見るのは初めて。空前絶後の圧巻的迫力に唖然。

色彩はおぼろげなパステルカラー調でどぎつさは皆無。シャバンヌとかマルケなどの色彩に近い洗練されたもの。デッサンは精妙で(ミュシャはモデルの写真撮影を活用していたらしい)、構成は精緻。ポスターでおなじみの軽妙洒脱、甘い砂糖菓子のようなミュシャとは全然異なる気合い十分の作品は見事なものだった。この春最大の見もの、というか近年まれにみる充実した展覧会といえる。

惜しむらくは図録の色校正が悲惨な状態で、実物とはあまりに乖離したどす黒い印刷に仕上がっている点は非常に残念。展示構成も最初に超大作を見せてしまうので、後半のポスター類が相対的に矮小に見えてしまい、付け足しのようになっていたのは上手な見せ方とは言えない。順路を逆にすればいいのにと思った。とはいえお勧めの展覧会であることは変わらない。今までのミュシャ展で見たものはすべて忘れてしまってもよい。これを見ないのは損だと思う。


会期:3月8日〜6月5日  会場:六本木国立新美術館




こちらはプラハでの展示


一般公開が始まったら館外まで長蛇の列


https://www.youtube.com/watch?v=kMRPaNp2yNQ
展示作業の様子



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