雨の薪能

ご近所のおばちゃんから誘われて3人で神社境内で開催された薪能を見物に行った。往復はがきで申し込むと1000名まで入場可能(無料)な毎年恒例のイベント。17時30分の開演予定だったが、天気予報は雨。会場は拝殿前の広場だからレインコートを着ないとずぶ濡れとなる。われわれはビニールカッパと座席を拭くためのタオルを用意して待機。17時に入場が始まると、あっという間に座席が埋まった。小雨が降っていたのでみなさんレインコートを着ている。

17時30分にセレモニーが始まった。終戦記念日なので祝詞を上げたり、拝礼したりといろいろあって、能が始まる頃には雨もかなり本格的に。仮設舞台には屋根がないから舞台はびしょ濡れ。どうするのかと思ったが、能役者は舞台奥の拝殿の廊下で演じていた。奥行きが浅いため動きに制約があったが、拝殿内の白木造りのしつらえを背景にしているから荘厳な雰囲気があった。演目は「羽衣」と「船弁慶」、それに狂言の「二人大名」。狂言では野村萬斎が出演していた。

最後の演目が始まる前に雨があがったので、スタッフが総出で舞台を拭いて「船弁慶」は仮設舞台で演じられた。より客席に近いので迫力がある。惜しいことに途中から小雨が降り出したため、出演者は廊下に戻って演技を続けた。霧雨越しに見る能は、ゆったりしたテンポで奏でられる音曲の間合いに軒先から垂れる滴の音や遠くで鳴いている蝉の声、時々烏も加わり、野趣があって面白かった。「羽衣」の舞のスローなテンポを基本にしながら緩急の変化を細かく付けてくる様子を見ていた時、晩年のチェリビダッケカール・ベームの指揮を思い出してしまった。遅いテンポでなければ体現できないデリケートな表情、刻々と過ぎてゆく時の重みを聞き手に意識させる演奏。

能に誘われた時、8月15日に屋外に長時間いると熱中症が危惧されたが、雨に濡れながら拝見することになるとは予想外だった。演目が終わるころに雨も上がり、参道は涼しい風が吹いていた。その後、マンションに戻って14階のいつおのおばちゃんのサロンで宴会開始。手料理をご馳走していただき、深夜12時過ぎまで談笑してお開きとなった。8月15日に珍しい体験をさせてもらった。


 羽衣
 船弁慶




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