那須高原は藤の花盛り

那須高原に日帰りで行ってきた。那須塩原駅まで新幹線で行き、そこからレンタカーを借りた。好天に恵まれ、高原はいい風が吹いていた。新緑の森のそこかしこで藤の花を見かけた。上品な薄紫の花房は、緑の絨毯から流れ落ちる滝のよう。道路の両側は楢の森。天高く伸びた枝がアーチのように道を覆い、さながら緑のトンネルだった。

そんな高原らしい道路を走って、某工芸作家夫妻のお宅をお訪ねした。人里離れた森の中、敷地面積は2000坪という桁外れの広さだった。よく手入れされた庭の中に工房や住居が点在していた。フランス風に幾何学的にデザインされた庭園では、つつじやシャクナゲ芍薬、金鎖が満開だった。ホテルのロビーのように広々としたリビングルームには、ラリックの花瓶に庭で摘み取った赤い芍薬が活けられていた。

2011年3月11日の地震では平屋の建物の一部が半壊し、保管してあった作品の3割が破損したそうだ。1500kgもある電気炉が地震で水平方向に1mほど動いたというから、すさまじい。工房の機材は倒れてメチャメチャ。那須放射線量が高いので、地表を30cm削って除染したが、それでもまだ放射線量が高いらしい。周囲の森は地表を削る作業はしてないので、そこかしこに、たまっているのだろう。除染したから安全なんて所詮は絵空事なのに、もう大丈夫だから戻ってきて住みなさいと政府が発表するのだから嫌になるといっていた。

作家夫妻は、どこかに移住しようとして適地を探したという。しかし、沖縄以外は、日本全国、どこに逃げても地震原発の危険から逃れられないことが分かったそうだ。沖縄も台風銀座なので、ニュージーランドへの移住も検討したが年齢制限にひっかかるから諦めたと語っていた。原発事故に関しては政府やNHKは嘘ばかり言っていると、たいそう怒っておられた。東京の人は、もう放射能に対して鈍感になっているが、福島原発から100キロ圏内に住む住民にとっては、いまだに現在進行形だとも。そんな話を聞いてからは、森に咲く藤花を見ても、きれいきれいと喜んでばかりもいられない。午後1時から6時まで、那須塩原駅から目的地2か所を回って90kmほど走行した。JRレンタカーで借りたマーチは燃費が良く、ガソリン代は500円しかかからなかった。




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