京都醍醐寺展を見る
サントリー美術館で始まった醍醐寺展の内覧会(9月18日)を見てきた。招待客がいっぱい。入口に長蛇の列が出来ていた。サントリー美術館の内覧会がこんなに混むのは珍しい。展示室内は国宝がいっぱい。あれも国宝、これも国宝、隣も国宝・・・国宝フェチにはたまらないだろう。明治の廃仏毀釈の際に、宝物を売らなかった当時の座主の英断のおかげで、国宝クラスの寺宝が大量に残ったらしい。
仏像は平安前期から鎌倉、室町あたりまでの有名なものがずらりと出ている。ポスターになっている如意輪観音は最初の部屋に置いてあった。小さなお像だが、保存状態がよく、とてもエレガント。光背の二重円光はオリジナル、周囲の火焔は後補らしい。
一木彫刻の虚空蔵菩薩は彫りの技が素晴らしく、小品なのに存在感がある。衣文は技巧を誇示する方向に走り出しているけれど、平安前期の仏像ならではの高密度感を放つマニエリスム的な面白さ。
最初の展示室を出て階段を下りたところに安置されていた薬師三尊は巨大なマッスの威力で圧倒してくる。信仰のパワーを物量で可視化する姿勢が頂点に達したころの作である。この後、平安後期になると物質性を超越した幻想的なスタイルが支配的になるから、この薬師像のようなブロック的造形は影を潜めてしまう。
薬師三尊
絵画も保存状態がよい物がたくさん出ていて、鎌倉時代の五大尊像(五大明王)はとても迫力があった。秀吉関係の桃山時代の作品も面白く、いろいろ目移りしてしまう。
そんな中で、私が一番気に入ったのは平安時代前期(10世紀)の五大明王像のひとつ、「大威徳明王」を背中に乗せている牛。足が短く、顔が巨大というバランスが絶妙。目などは何ともとぼけた表情を醸し出している。のんびりしていて屈託がない。明王さんのお顔も、怖いような怖くないような、いい味を出している。
醍醐寺の牛
よその同じ尊像の牛(たとえばシリアスな東寺の牛)と比べると醍醐寺牛の可愛さは際立っている。作者はわからないが、遊び心があった仏師なのだろう。ぱっちり眼の牛のレプリカがあったら絶対買うのに。牛をアップでレイアウトしたグッズがないのは残念に思われた。
東寺の牛