バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番 プレリュード」

S先生のお許しが出て、個人レッスンでいよいよバッハの無伴奏組曲を教わることになった。2014年の元日にも「今年はバッハを・・・」と似たような願望を抱いていたが、スズキ教本第4巻に出てくる組曲第1番メヌエットだけしか実現しなかった。まだ今年の個人レッスンは始まっていないが、とりあえず組曲第1番のプレリュードをさらい始めた。

しかし楽譜によって記述が異なる箇所があるため困ってしまった。この曲のバッハの自筆譜は行方不明のままである。したがって現在、流布している楽譜はアンナ・マクダレーナによる筆写譜や、弟子のケルナーの筆写譜などを典拠にしている。両者はバッハの近くにいた人たちであるが、二人が書いた譜面には齟齬があるので厄介な問題が出てくる。 こういう場合、歴史学でやる史料批判的な見方をする必要がある。現在流布している出版譜を買いあさって、内容を見比べてどっちの採用例が多いかをカウントし、多数決で決めるような訳にはいかないのだ。

今、私が迷っているのは、第33小節の3拍目にある3つ続きの16分音符の重弦から始まる重音の弾き方。3並びは偶然ではないらしいが、それはともかく、慣用的に行われている奏法はA線の開放弦とD線のA音を交互に移弦しながら弾くやり方である。

しかし、この部分の筆写譜はいずれも重音指定なのだ。それを無視したドッツァウアーが1826年にブライトコプフ社から彼の版を出版した際に、移弦奏法に書き直したものが、現代まで普及したらしい。

市販されている楽譜で重音指定になっているのは赤い表紙の「ウイーン原典版」と「ヘンレ版(2000年の初版)」ぐらいである。(ヘンレは2007年の改定版では重音指定は解除された)

33小節からの一連の16部音符の連続個所を移弦奏法で演奏する場合は、ガサガサしてしまうと具合が悪い。開放弦のA音が過剰に目立ってしまわないようにして、それ以外の音を滑らかにつなげてゆかないと和声の進行変化が浮かび上がってこなくなる。

一方、A音の重音を繰り返すと、2本の弦で同じ音を弾くために聴感上は強音によるダメ押しのように聞こえてくる(バッハが同じ書法で書いた無伴奏バイオリン・パルティータ第2番のシャコンヌの該当個所では、そう聞こえるように演奏される)。

チェロ組曲で、それをやるのか?バッハがこだわっているらしい3という数字を強調するなら、それもありなのだろうか。ヘンレ初版譜を使っているS先生に聞いたら、重音で書かれている譜面には従わずに、伝統的な移弦奏法で弾いているとのことだった。




この問題に関しては横山さんのHPを参照
http://bachmubansou.blogspot.fr/2014/09/blog-post_17.html


 

 



いろいろな版を買い集めてみたものの



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