ひじの位置は高めが合理的?

チェロ仲間のブログを読んでいたら「左手の小指で弦を押さえた時だけ音が濁るのはなぜだろう」と書いてあった。そこで私はグループレッスンの先生から教わった金沢のルドヴィート・カンタ師匠直伝のコツを書き込んだ。つまり「指先に腕の重みをぶら下げるつもりで押さえよ」という方法。小指の力だけで押さえようとすると、弦の押さえが甘くなって音が濁る。

まもなく別の人が私の書き込みを見てコメントを付けてきた・・・・

左手の「腕の重みをかける」ことだと思います。「腕の重みをぶら下げる」と言葉で読むと、ちょっと左肘の姿勢を誤解してしまうかもしれません。 左肘が下がらないようにするのが重要らしいです。

「重みをかける」も「ぶら下げる」も実質的には大差ないが、左ひじを下げないことが重要であると思った根拠として、某楽器商のHPにある連載エッセイをあげていた。

カンタ師匠は、低ポジションでは左ひじは下げて弾けと指導しているから、この場合は「腕の重みをぶら下げるつもりで押さえる」という説明でよい。そういうニュアンスを込めている。腕の重みを指にかけるには、2通りの方法しかない。指を真下に向けて弦を突き刺す形か、弦に乗せた指に腕をぶら下げる形。

某HP推奨の左のひじ位置を高めにキープする姿勢では、指先に「腕の重みをかける」のは無理がある。ひじが高いと腕の重みは指先に乗ってこないから、指に新たに力を加える必要がある。同時に左ひじを高い位置に維持するためにも力が必要となる。指にも腕にも無駄な筋力を要求するこの姿勢は、力学的に考えれば疲れやすい弾き方といえる。

それでカンタ師匠は、奏者の疲労軽減のために(腕や肩の故障防止のために)ひじ位置を下げるように指導している。ひじを下げると小指の位置が指板に接近してくるから、なおさら押さえやすくなるメリットがある。拡張時の人差し指もスムーズに上方向に伸びるので具合がいい。演奏者の身体的負担を低減する奏法という観点には説得力がある。古い奏法の支持者で、このポイントに言及している人はいるのだろうか?

ハイポジションへの移行では、ひじを支点にして扇状形のカーブを描いて左手が動くことになる。この動きも人体構造にかなった自然さがある。ひじを高くする人はエレベーターが上下するみたいに、左手を並行移動させるのがいいと主張しているが、人間の肩や腕の構造は、そういう動きには適していない。

紹介されたHPの記事では、左ひじが低いと様々な悪影響があり、ひじの高さは固定するべきと書いてある。その理由はハイポジションを弾く姿勢でローポジションも弾きなさいというもの。しかし、ローポジションしか弾けない初心者にハイポジションの姿勢を求めるのは、疲れがたまるだけである。UPされている写真の手の形、指の曲げ方も随分と不自然で、特に指の曲げ方で拡張の模範形として披露されている画像は、真似たら腱鞘炎になりかねない無理な姿勢になっている。

主観的な見解を羅列したエッセイだが(エッセイだからそんなものだが)、内容を万人が認める定説であるかのように信じる人がいるのは、ネット社会の落とし穴かもしれない。独学で楽器をやっている人にとっては、他に相談相手がいないから、ネット情報に頼るのも仕方がない面はあるが。ヨーロッパの現在の奏法の議論は合理的なものが多いから、古い奏法を身につけた人の意見とは当然ギャップが生じてくる。氾濫するの情報の山から何を拾うかは読み手次第。


低ポジションで左ひじを下げる実演は以下を参照。
桐朋音大教授の倉田先生は、某HP推奨の古い構えは不採用。
クリックすると左ひじの位置が低い様子が分かる。
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倉田澄子チェロ講座Q&A - YouTube



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