「金で時間を買う」

>時々(若い)シニアの方から、「私はあと何年弾けるかわからないから‥」と、良い楽器や弓の購入を迷われている人がいます。それは逆なのです。時間が少ないからこそ(もっとも、少ないと言っても、多分10〜20年くらいは元気に演奏活動を続けられるでしょう)、時間を無駄にできないのです。ちょっとえげつない言葉に聞こえるかもしれませんが、「金で時間を買う」のです。
http://sasakivn.com/blog/?p=7125


私も訪れたことがある都内の弦楽器工房店主が「レイトの人こそいい楽器を使うべきだ」と言っている。高性能な楽器や弓を使わないと、時間を無駄にするだけで損という理屈はもっともだと思う。

私が関わっているお教室にも数万円の入門用中古楽器とへなちょこ弓でチェロやヴァイオリンを習い始めた人がいる。調整不良なのか元から発音性能が悪いのか(その両方かもしれない)、鳴らない楽器に、鳴らせられない弓の組み合わせで練習をしている。当人は高性能な楽器や弓の威力をご存じないから、弦楽器なんてそんなものだと思っているふしがあるが、かなり損をしている。

40年以上も前、私が最初に買ったヴァイオリンは教室の先生に選んでもらったものだった。教室で楽器を受け取ったのでどこの店で買ってきたのかも知らないミッテンバルトの新作楽器(Karl Bitterer)は、低音は朗々と鳴り響いたがハイポジションは得意とはいえず、上に行くほど詰まった感じになった。初心者だった私は、ヴァイオリンはそういう鳴り方が普通なのだと思っていた。ずっと後になってイタリア新作に買い替えたらハイポジションに行くほど煌びやかに突き抜けて鳴るのでビックリしたものだ(Karl Bittererは後年、佐々木工房でケアーしてもらったら高音域の発音が改善され、素直に鳴るように変わった。調整不良だったのかもしれない)。

弓は先生が選んできた数万の品は弾き勝手が悪く、そのことは先生の弓を借りて弾いてみたら初心者でも違いがすぐにわかった。無理を言って先生がお使いの象牙弓LOTHAR SEIFERTを譲ってもらうことにしたのだが、初心者こそ弓にお金をかけないとダメだと思い知らされた。以来、楽器や弓をいろいろ買い替えて、性能と値段は比例するという当たり前の事実を認識するようになった。よい道具はイニシャルコストは高くつくが、高性能を楽しめて、手放す時には二束三文にはならないメリットはある。Karl Bittererは30年後に購入価格の2倍で下取りされていった。




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