お店を通さないで楽器を買う方法

近所に住むチェロ弾きの男性と会って弓を拝見した時の話。彼は30代のアマチュア。奥さんもチェロを弾くらしい。弓道楽にハマっているそうで、海外のコンクールで優秀な成績をおさめた作家さんと直接コンタクトをとって、オーダーしているという。
見せてもらった新作弓はフランス系スイス人の作。2004年にVSAで金賞を取った作家で受注生産が大半だという。楽器店に並ぶほど流通量は多くないから日本では知られていない。 スティックの色は黒っぽいチョコレート色だった。よく寝かせた古材を使っているらしい。全体のバランスは非常に良好でヘッドが軽めで弾きやすい。重量は79gと標準的。さすがに金賞作家の弓で実用性に抜かりはない。音も新作にしてはこなれていて、乾いたタッチでサラッとしていた。

ヴィネロン(1890年)と交互に弾き比べてみたら、ヴィネロンは楽器の胴が鳴り、新作は弦が鳴る感じ。楽器の芯を鳴らす底力は若干おとなしい。音色の若さ(浅さ)とパワーが控えめな点を除けば、新作の生っぽさがないのは好感が持てる。ヴィネロンとバランスが似ているので、私には弾きやすくてよかった。 この弓を直輸入すれば$5,500。国内の楽器屋さんで同等の弓を探しても、50万では買えないからお買い得感は十分といえる。流通量が少ない弓を持っているのは、コレクターとしても面白い気分だろう。

彼がこれまでに買った新作弓は4本で、合計すれば200万を超過しているらしい。新作を3本我慢すればそこそこの古い弓が買えるだろうと勧めてみたが、弓1本にど〜んと出費するのは躊躇するという(しかし、こういう人は、遠回りをして結局オールドボウに至るものなのだ) 。

最近、2010年のVSAコンクール・チェロ弓部門で金賞を受賞したアイルランドの作家に発注したそうだ。金弓が4300ユーロで14か月待ちとか。ユーロ安だからタイミングはいい。国際コンクール優勝者の弓なら、現代のトップクラス。それが50万ぐらいで手に入るなら、直接オーダーして集めてゆくのは賢い発想といえる(日本で人気のベルギーあたりの著名ブランド弓が、軽く100万オーバーとなるのは、複数の問屋を経由することも影響している)。私は悠長に待てない性分だし、現物を確認してから買いたいので、こういう気長なやり方は苦手だが、どんな弓が届くか、じ〜〜っと待っているのは、魚釣りみたいな感じで楽しい時間になるのだろう。

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