弦楽器フェアを見る

今年は科学技術館の1階全フロアを使っていた。毎年見かけたパーツ屋さんが出店していなかったり、その代わり新顔の中国メーカーのブースが登場したりで、毎年見慣れた景色がだんだん変わっていくのを感じた。

 

3日は12時から地下のホールでチェロの演奏会があった。演奏者は芸大教師の中木健二さん。フランスのボルドーのオケで首席を務めた人。演目はバッハの無伴奏以外はフランス音楽が多かった。定番のベートーヴェンブラームスなどのドイツ音楽はなし。切れ味鋭く、軽妙洒脱。あか抜けた演奏スタイルだった。前半に6本、後半7本のチェロが登場。最初の数本はいかにも弾き込まれてない新作という感じで、音が詰まり気味で弾きにくそう。4番目に登場した畏友伊藤三太郎のチェロは例年通りにゆるゆると箱が鳴っていた。前半の最後に弾かれたオリヴァー・ラトケという外人作家のチェロは抜きんでてよく鳴っていたが、かなり弾き込まれた楽器で新作ではないらしい。後半の演奏会も聞いたが印象に残る楽器はなかった。

 

15時45分からヴァイオリンの演奏会もあったので、そちらも聞いた。須山暢大さんという男性奏者が次々にアンコールピースみたいな有名曲を弾いていった。前半だけでも1時間、ずっと弾きっぱなしでお疲れ様。聞いている方も疲れた。どの楽器も似たり寄ったりで、奏者の音に染まってくるのだろうか、音色の差がほとんど感じられなかった。音量では個体差が出ていて、よく伸びる楽器と詰まり気味の楽器の違いはわかった。バリバリと元気よく弾いてくれていたが、ちょっと聞き疲れ、途中で寝てしまい、ふと目を覚ますとまだ同じ曲が続いていたり。前半だけ聴いて後半のプログラムは遠慮した。二村英仁さんが弾いた時は、目も耳も釘付けでウトウトする暇はなかったのだが。

 

展示会場の方ではロッカとジオ・バッタ・モラッシのチェロを試奏した。ロッカのチェロを触った時にはグランアダムの弓が出てきて、むしろ弓の方に興味津々。木が十分に枯れている感じで軽いのだが、しっかり楽器を鳴らすパワーを持っていて、焦点がはっきりした音が出てきた。チェロに関しては展示会に出ている楽器は休眠状態のものが多いから、ちょっと触ったぐらいでは真価はわからないだろう(弾きなれている自分のプラットナーと比べるとロッカは??)。今年の2月に亡くなったモラッシのチェロ(1975年)は、スクロールのニスがだいぶ剥がれていて、よく使われてきた楽器のように見えたが、音はさっぱりで、こもっていて全然鳴らない。寝ぼけているのは(たぶん)楽器屋さんの在庫になってから弾かれずに放置されてきた結果なのだろう。

 

ヴァイオリンはファニョーラ(1000万)を弾いてみた。こってりした濃厚なミルキー調の音があふれ出る。ぎっしりと中身が詰まった密度の濃い音。グリュミオーが使っていたメーカーだそうだが、なるほどと思った。弓は笹野さんがこげ茶色の材で作ったヴァイオリン弓とチェロ弓が好印象。サルトリを連想させるものがあると知人(サルトリを所有している)が言っていた。ずっしりとした手ごたえある重量感としなやかなスプリング性能が調和したなかなかの良弓だった。

 

 

 

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