チェロのレッスン 121

バッハの「無伴奏チェロ組曲第1番」の続き。今日は前回より演奏がマイルドになっているとの講評を頂戴した。オールドチェロをフレンチモダン弓(1890年)で弾いたためだろう。前回は新作チェロ(見附精機のカルテット10mmを装着)に新作剛弓(2008年)を組み合わせたから、かなり硬派の攻撃的な演奏になっていた。若いチェロは元気モリモリ、パワーはあるけど、バッハの練習に使うのはどうかなと思ったり(新作チェロを弾くと、今度はこれはこれで若さが魅力・・となるから結論は出ない)。

弓に関しては新作の若い音はいかんともしがたい。腰は強いものが多いから操作性能はいいとしても、強すぎるとコントロールが難しくてガサツな演奏になってしまう。どんぐりの背比べというか、あるレベルで新作は横並び、性能が頭打ちとなる。一方、よく出来た古い弓は、底がすぐに見えるような限界点の浅さを感じない。どう弾いても、やさしくいなしてしまうような懐の深さがある。
楽器屋さんのHPに新作弓のことが書いてある。「新作のメリットは主として弾き勝手に限定されますから何も大金を払う必要はありません」。弾き勝手に限定されますとは音色を期待しても無駄の意味。「音の良さまでをも感じさせる選び抜かれた新作をご用意しております」=新作弓の中での相対的評価ということ。行間を読めばかなり正直に語っている。
http://www.musicplaza.co.jp/price/new_bow.html

今日のポイント。
① 移弦を繰り返すところで、本来弾いてはいけない隣の弦に弓毛がわずかに接触し余計な音が混ざってくる点に注意。S先生も、「これは私もやりがちでしたね〜」と仰っていた。

②移弦しながら4本の弦を交互に弾くような分散和音では、最低音を重要視するようにとのこと。私の場合、C線で弾く低音がかすれたりして、しっかり弾き切ってなかった。一番、端っこの弦で、じっくり低音を響かせるには、弓を持つ手の角度、腕のポジションなどを、それなりに大きく動かす必要がある。C線だけを単独で弾く場合は問題ないが、4本の弦をめまぐるしく移動すると、C線側に弓を持って行った時に、噛みが甘くなってしまう傾向がある。対策としては、とにかく最低音をズーンと響かせることを意識して、焦らずにC線を鳴らす必要がある。C線の音量を太く出すように注意する。

グループレッスンのチェロ教室で一緒だったおばさまの新作国産中級弓が最近不調だという。ねじが固くて回らないので、手袋したり輪ゴムを巻いて、なんとか回しているとか。S先生にも見ていただいたが原因不明です。どうしましょう?と相談メールが来た。私の返事は「すぐに工房に持ってゆきましょう」。

ねじが固くなったのは、おそらく、ボタンの雄ねじとフロッグ内部のアイレット(真鍮製の雌ねじ)の噛み合わせ位置が微妙にずれたためだと思う。湿度の影響かなにかで。軸線が揃わずおかしくなっている状態で、力任せにねじを回せば、相対的に柔らかい材質のアイレットの受け側のねじ山が摩滅する。そうなるとガタが出てアイレットを交換することになる。ピッチが揃わない場合はねじを切り直すか、スクリューの雄ねじも一緒に交換するので厄介である。ねじの調子がおかしくなったら、強引に回してはイケナイ。ねじを破壊して、状態をどんどん悪化させるだけである。ねじ山に異常が発生してなければ、アイレットを回して高さを微調整すれば問題は解決するだろう。オールド弓ではこの手のアクシデントは珍しくないが、まだ新しい弓でも起こり得るのだ。新作弓は制作後1〜2年以内に歪みが出て、再調整が必要になる場合があるという(某国産メーカー品にはそれが多いと工房の人から聞いた)。



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