ヨーヨーマの録音集

この頃のレコード会社(そういう呼び方は古いが)は、昔の録音をまとめてボックス化し、大安売りをする。ユニヴァーサルグループのDG(ドイツ・グラモフォン)やデッカ、最近ユニヴァーサルに吸収されたEMI、BMGを買収したSONYは次々に廉価攻勢を仕掛けてくる。ワーナーはとっくに安売り専門会社(?)に変貌してる。 世界的なメジャー3系列がこの調子だから、CDのデフレ現象はとどまる気配がない。

この種の廉価版といえば、かつてはSP録音、LP録音(モノーラル)、ステレオ初期録音あたりまでが安売り対象だった。しかし、現在はデジタル録音も安売り対象になっている。30年前に3500円だったCDが、セットになって1枚あたりの単価が100〜200円になっているのだから嫌になる。

クラシック音楽産業の不況で新規の録音ビジネスが縮小する中、メーカーではリマスタリング(音質改善)という手法で旧録音をお化粧直しして、同じ音源を何度も売り出してきた。ところが、デジタル処理をやり過ぎて原音のナチュラルさが失われ、80年代に発売された初期盤が、コレクターの間では珍重され高値で取り引される始末である。 CDが出始めたころは音質加工技術が今ほど発達してなかったから、元の音をあまりいじくりまわしてない。野暮ったい音ゆえ生成りの自然さが残っているのがコレクターに好まれるらしい(エンジニアの資質も関係するが)。

一方、その後各社から発売されたリマスター盤は、整形手術で顔全体を作り直した美人みたいになったのが多い。音がクリアになったものの、ピカピカのテカリも増加してメタリックな響きが目立つDGのオリジナル・イメージ・ビット・プロセッシング。ドンシャリ強調の東芝EMIのHS2008。音の漂白化(均質化)が著しいEMIのART。SONYのスーパー・ビット・マッピングは、盆栽的・箱庭的なこじんまりとした音場になった。

他にもヒスノイズをカットしすぎて高音域が詰まるやら、モノーラル録音にステレオ効果を付与しすぎてモワモワになったりと、しょうもないCDが市場に溢れた。例外的に音がいいと思われたのはJVCのxrcdだが、再発音源の割にはCD初期に戻ったみたいに値段が高かった。

最近はリマスタリングでギラギラ・ツルピカ化、ないしはモコモコのノイズカット加工が減り、アナログ風のしっとりした緻密な音を目指したCDが増えてきた。その最新リマスタリング処理をした昔の音源を、BOXものに仕立てて次々に出してる。1枚あたりの単価は初版価格の10分の1以下だから、旧盤を持っているにもかかわらず手が出てしまう。

EMIやSONYは、一人の指揮者とかピアニスト、バイオリニスト、チェリストの録音集を盛んに出している。SONYのヨーヨーマ30周年記念ボックスは、縦横がLPレコードのジャケットと同じ30cm角、厚みが18cmの箱に90枚のCDが2列に並んで入っていた。 これまでCBS・SONYで行った30年間の録音活動の集大成だそうだ。それぞれのCDが初出時のレコードやCDのパッケージデザインを復刻した紙袋に入っているのは最近の流行どおり。さらに312ページもあるハード・カバーの写真集も入っている。蓋にチェロの実物大の写真をあしらったのは面白い趣向だが、箱が異様に大きい。LPレコードを意識させるサイズを採用しているから置き場所に困る。

セットものは、いつか、そのうちにの「積ん読」みたいな状態で、聞かないCDが多い。バッハ全集、モーツアルト全集も手つかずのまま放置している。過去にLPやCDで聞いているものが多いので、内容を承知しているからでもある。ならば同じ音源を買い直さなければいいのだが、リマスタリングバーゲン価格につられて買ってしまう。ヨーヨーマの箱は限定盤。HMVではだんだん値下がりして、発売当初の6万が最後は1.5万程度まで安くなっていた。たたき売り同然である。残り物を拾えてラッキー♪とは思うが、ほとんど聞かないだろう・・・コレクター心理とは厄介なものである。








にほんブログ村 クラシックブログ チェロへ
にほんブログ村