2012 弦楽器フェア (その2)

毎年、弦楽器フェアでは、弓もかなり出品されるので楽器屋さんや個人作家のブースを見て回り、次々に手に取って試奏している。去年まではバイオリンの弓を触っていたが、今年はチェロ弓に変更。試奏用に使わせてもらったのは、主に園田さんと伊東三太郎氏のチェロだった。顔見知りの弓メーカーの関係者が、今年は私がチェロを弾いているのでびっくりしていた。

フランス在住の笹野さんが出品したチェロ弓は、非常に硬い材が使われていて、持った瞬間にどんな音色が出るかが想像できてしまった。見るからに高級品のオーラを出していて存在感が凄かった。かなり重さを感じさせるバランスの竿なので、使いこなすのは腕利きじゃないと無理だろう。

アルシェも重くて硬い材で作った角弓を試奏用に出品していた(SA-PRO 63万)。ちょっと触った感じでは、大きな音量が出るので好印象を受ける。しかし、持ち重りするタイプなので長時間使用した場合はどうだろうか。エッジが立つ音色の硬さは好き好きだが、いずれにせよ力量のある男性向けの剛弓だと思われた。

シャコンヌのブースでは、私も使っているロン・ディ・マの弓を2本試した。為替の関係だろうか去年は90万だったが、今年は70万に値下がりしていた。2本とも普通の弓の印象で、可もなく不可もなし。私のサルトリコピーはかなりの自己主張がある弓で、癖も強いが面白味もそれなりにある。今回、シャコンヌで展示していた2本には、そういう濃い味はなかった。 当たり障りのない無個性の弓なら、このメーカーを選ぶ必要は感じない。

河辺さんのブースにはチェロ弓が2本あった。一本は角弓で明るい黄色の材がとてもきれい。眺めているだけでほれぼれする美しさがあった。弾いてみたら食いつきはあまり強くなく、スルスルと弾けるそつがない上等な弓のイメージ。90万だそうだ。もう1本は変則タイプで、竿の背中に角弓的な稜線が入っているが、側面は丸弓に加工したもの。あえて折衷的な姿で作ったとご当人から聞いた。こちらは1本目より多少ヘッド寄りのバランスで、吸い付きが良好。私には弾きやすかった。値段は70ぐらい。価格相応の実力の印象。

杉藤は中級品のチェロ弓3本を展示していた。いつものように最高級品が展示されないのは不思議だが、1本だけ他の2本と明らかに違う姿をしているものがあった。若くして亡くなった先代社長のオープンフロッグの実験モデルを彷彿させるオイルフィニッシュ仕上げで、明るい黄色の竿に水平方向の木目がはっきりと浮き上がっている(他の2本はドイツ風に暗い赤茶色に染めた普通の弓)。

かなり軽い弓だったがバランスがいい。ヴォアランとかラミーの弓の説明で使われる「羽のように軽い」という形容が当てはまりそうな感触がある。そんなテイストも先代社長の意欲作を連想させた。これを作った高齢の職人さんがブースにいて、いろいろ説明をしてくれた。私が注目した弓は、これだけは作り方が違うのだと盛んに力説していた。普通の弓はまっすぐな材料を火であぶって湾曲させるが、このモデルは木取りの段階から反りを計算した切り出しをしている云々。

園田さんと三太郎氏の両方のチェロで試してみたが、軽いのに強い。しなやかさもある。弦の噛みも良好。操作性に関しては、私が持っているドライカーボン弓に近い印象だった。会場ではあちこちで楽器を弾いている音が聞こえるから、音色がどうなのかははっきり判らない。ひょっとするとこの個体は当たりかもしれないと思われたので、後日、送ってもらい自分の楽器で試してみることにした。

18時の終了間際まで会場に居たが、帰り際に松脂やクリーナーを販売しているショップをのぞいた。ラーセンの松脂が800円で出ていた。私が好きなバイオリン用は売り切れで、ビオラとチェロ用しか残ってなかった。しかし、楽器のクリーニングに使うVIOLが1瓶600円で売られていたので、店頭にあった分を全部買ってしまった。ニスが痛むので楽器本体にはクリーナーは使わない主義だが、弓のスティックに付着した松脂を拭き取る際にVIOLを使うと、汚れがきれいに落ちるので重宝している。最終日の閉店間際に売れ残りをまとめて買ったら、おまけに1本付けてくれた。残り物に福♪



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